2015 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンの尾隠し行動への影響―女性の寒冷時行動性体温調節メカニズムの解明―
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26870417
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
内田 有希 高知大学, 医歯学系, 助教 (50634002)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エストロゲン / 行動性体温調節 / 寒冷環境 / 熱放散 / cFos / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ラットの自然な寒冷時体温調節行動と考えられる「尾隠し行動(Uchida et al., 2012, J Comp Physiol A)」に対する女性ホルモンのエストロゲン(E2)の影響を明らかにすることである。本年度は【実験2】尾隠し行動を修飾するE2 のTRPM8への影響の解析を実施した。TRPM8とはTransient Receptor Potentialイオンチャネルファミリーの一つで皮膚に分布する感覚神経終末に発現し、環境温25℃以下の軽度な寒冷時に活性化する冷受容分子である。エストロゲン(E2)投与、非投与の卵巣摘出ラットの背部にvehicleまたは10%メントール(TRPM8作動薬)を塗布し、寒冷(16℃, 2時間)または室温(27℃, 2時間)暴露し、腹腔温、尾部皮膚温、尾隠し行動を計測した。以下の結果を得た。 (1) メントールは寒冷でも室温時でも、E2の有無に関わらず、体温を上昇させた。またメントールはE2の有無に関わらず、室温時には尾部皮膚温を上昇させ、寒冷時には下降させた。 (2) E2は寒冷時にメントール塗布した時、体温と皮膚温に影響しない。しかしE2は室温時に、メントール塗布による皮膚温の上昇を抑制した。このとき、E2はメントール塗布による体温上昇を抑制した。 (3) メントールは室温時、E2投与時のみ、尾隠し行動を低下させた。 【結論】メントールは雌ラットの体温を上昇させ、寒冷時は皮膚温低下、室温時は上昇させる作用があることが示唆された。E2は室温時にのみ、このメントールの作用を減弱させることが示唆されたが、個体数が少ない為、今後追加実験を行い検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬剤塗布方法の予備実験に時間がかかった為。当初の計画では、エリザベスカラーをラットに装着し尾部に皮膚塗布する予定だったが、カラーによりラットの行動が制限されることが予備実験で明らかとなった為、他の方法を検討した。よって、全体としてやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本実験を継続する予定である。また、尾隠し行動を修飾するE2 のTRPA1(冷受容分子)への影響の解析の為、TRPA1作動薬のシナモアルデヒドを用いた予備実験を開始している。このように来年度の研究を推進する方策をとっている。
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