2015 Fiscal Year Research-status Report
トロパン骨格の生合成に関与する酵素の構造機能研究および非天然型化合物群の創出
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26870425
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田畑 香織 (佐々木香織) 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90464388)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トロパン骨格 / 生合成酵素 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナス科植物であるダツラにはトロパン骨格を持つ薬理学的に重要な化合物が含まれている。中でもアトロピンやスコポラミンは抗コリン作用を示すことが知られており、散瞳や鎮痙、鎮痛薬として用いられている。これらの化合物はオルニチンをスターターとして合成されることが分かっており、いくつかのステップに関しては反応を触媒する酵素が同定されているが、トロピノンを合成するステップについてはポリケタイド合成酵素が関与すると考えられるものの、まだ明らかとなっていない。そこで、大腸菌を用いてポリケタイド合成酵素の大量発現系を作製し、構造および機能を解明することを目的とし、研究を開始した。 前年度にダツラやハシリドコロからポリケタイド合成酵素と考えられる新規遺伝子のクローニングおよび大腸菌での発現系の構築、酵素反応条件の検討を行ったので、今年度は結晶化条件の検討からスタートした。精製した組換え酵素を用いて結晶化条件の初期のスクリーニングを行ったところ、いくつかの条件で針状やプレート状の結晶が得られた。この条件をもとに最適化を行った結果、柱状の結晶が得られた。この結晶を用いて放射光施設にて測定したところ、約2Åの反射データが得られ、アルファルファのカルコン合成酵素をモデルとして分子置換法により立体構造を決定することに成功した。 また、酵素活性の測定についても、基質の種類・組み合わせ、酵素反応液のpH、反応時間等について様々な条件を検討し、生成物が再現良く大量に得られる条件を調べた。 今後は、得られた生成物が何であるかについてLC/MS等を用いて調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに、大量に組換えタンパク質を調製し、精製、結晶化を行い、構造を決定するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今回決定したハシリドコロ由来のポリケタイド合成酵素の構造を他のカルコン合成酵素と比較し、基質特異性に関わると考えられるアミノ酸残基に変異を入れ、様々な基質を用いて酵素反応を行う。 また、様々な人工基質とも反応させ、新しく生成した化合物が何であるかについて解析する。
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Causes of Carryover |
昨年度は産休・育休を取得し、研究期間が4ヶ月しかなかったので、予定よりも研究費の使用が少なかった。その残額が今年度も残っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り、変異タンパク質の精製に使用するカラムや結晶化に使用する試薬・プレート、人工基質を合成するための試薬等に使用する。成果を学会で発表するための旅費としても使用する予定である。
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