2016 Fiscal Year Research-status Report
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26870431
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒川 雅 九州大学, 理学研究院, 助教 (10610264)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クラスター / 水 / 氷 / 水和 / 溶媒和 / 質量分析 / 金属クラスター / 溶解 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイズ・温度に応じて構造を多彩に変化させる水クラスターに着目し、氷への物質の溶解現象とその過程の解明を目指している。 前年度までに設計・製作した装置を使用して水クラスターを生成し、電子衝撃によりイオン化して検出した。フィラメントからの電子によってパルスバルブが加熱されて温度が上昇し、長時間にわたる水クラスター生成が行えないという問題があった。イオン化装置を改良することで、温度上昇を抑え、長時間の使用を可能にした。本装置を用い、水クラスターへの金属クラスターの溶解およびクラスター同士の反応実験を推進した。しかし、イオントラップ中の金属クラスターイオンと水クラスターのビーム軸を合わせることの難しさなどから、水クラスターのサイズ・温度と溶解との関係を系統的に調べるには至っていない。 そこで、上記の実験と平行して、金属クラスターや金属酸化物クラスターを水分子と一分子ずつ逐次的に反応させ、溶解(溶媒和)過程を調べる実験を行った。具体的には、銀、アルミニウム、珪素、マグネシウム、酸素から成るクラスターを生成し、水やアセトン分子が逐次的に吸着する様子を観測した。酸化珪素クラスター負イオンと水との反応では、主に水分子の吸着が観測され、水分子はOHとHとに解離して吸着することが分かった。この時、OHとHは、二つのSiO3(OH)四面体を形成するようなサイトに吸着することが分かった。多くのサイズ・組成のクラスターで水分子の吸着が観測されたが、このような構造を形成できないクラスターでは、吸着が観測されなかった。また、吸着サイトは酸化珪素クラスター上に局在した半占軌道(SOMO)の位置に支配されることが見出された。 以上の様に、水の吸着(水和、水・氷への溶解)に有利な構造が明らかとなった。より大きな水クラスターへの溶解と反応に発展させ、水クラスターの構造と溶解との関係を明らかにすることが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水クラスターのサイズ・温度と溶解との関係を系統的に調べるには至っていないが、金属酸化物クラスターが水や氷に溶解するために必要な構造を明らかにすることができた。水・氷の構造と溶解との関係を明らかにする上で、重要な成果が得られたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
より大きな水クラスターへの溶解と反応実験に発展させ、水クラスターの構造と溶解との関係を系統的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
これまでに、水分子が一分子ずつ逐次的に水和し、金属クラスターや金属酸化物クラスターが溶解していく様子を捉えることができた。一方で、水クラスターのサイズ・温度と溶解との関係を系統的に調べるには至っていない。これまでの実験で、実験開始時に予期しなかった結果を示すデータが得られている。そこで、再現性を確認するとともに、より精緻に解析を行って成果をまとめるべきだと判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
再現性を確認するための実験と成果発表の経費として使用する。
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