2016 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルブレインの観点に基づく自閉症スペクトラム障害児への支援システムの開発
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26870446
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 哲平 熊本大学, 教育学部, 准教授 (70515460)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 発達障害 / ソーシャルブレイン / 視線解析 / 模倣行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自閉スペクトラム症児(以下ASD児)の基本的な障害メカニズム解明のための実験研究として、視線解析装置を用いた表情模倣課題におけるASD児の注意の向け方について検討を行った。知的障害のないASD児9名(平均CA=10:06)と定型発達児17名(以下TD児、平均CA=9:10)を対象に、単純な対話場面(無表情)と、表情模倣が促される場面における注視点の分析を行ったところ、対話場面ではASD児はTD児に比べ”口”、”頬"や顔刺激以外の画面の領域に視線を向けることが有意に多く、”目”や”眉”といった領域をみることが少なかった。しかしながら表情模倣場面においては”目”領域の注視割合がTD児と変わらず、「顔の真似をして下さい」といった明確な教示があればASD児も眉や目などの領域に注意を向けることが明らかになった。 さらにASD児の通常学級における支援システムの開発として、グループプレイセラピーにおける模倣行動の促進や、衝動性のコントロールを目的とした活動の効果について検討した。また通常の学級における支援のあり方として、授業方法の工夫による発達障害児の心理的な効果についての検証や、応用行動分析の手法を通常学級に在籍している発達障害児に適用した効果などについての事例検討も行った。 一方、今年度は熊本地震の影響もあり、予定していた実験研究が対象者の協力を得られる見込みが立たなくなり、研究計画の見直しが余儀なくされた。次年度は研究最終年度であるため、遅れた実験研究等について進捗できるように計画する予定である。 また本年度に得られた研究知見については、次年度の学会(特殊教育学会等)において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4月14日に発災した熊本地震の影響もあり、特に発達障害のある子どもにおいて心理的な影響が考えられたため、実験協力者等の募集が遅れた。また前年度まで進めてきていた事例研究等も中断を余儀なくされ、研究計画全般的に遅れが生じている。しかし、研究最終年度である次年度には、遅れていた研究計画を取り戻せるように計画を立てている。 一方、昨年度は地震の影響もあり、学会等の参加・発表が困難となり、現時点で明らかとなった研究知見を広く発表し内外の研究者からの意見を聞く機会が持てなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本地震の影響もあったものの、研究開始段階の計画全体としては8割方遂行しており、特に通常の学級における発達障害のある児童生徒の支援システムについては、かなり有効な知見が得られてきている。次年度は最終年度として、研究のまとめと不足している研究データを収集して行く予定である。
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Causes of Carryover |
熊本地震のため、予定していた実験研究が対象者の募集見込みが立たないため研究計画の見直しを行った。そのため実験機材の購入や人件費の支出が少なかったなど、結果的に繰り越しとなり、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、前年度に実施できなかった実験研究等を行うため、繰り越した使用額は機材の購入や人件費の支出に充てる予定である。
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