2015 Fiscal Year Research-status Report
腸管恒常性維持機構におけるフルクトースの影響の解明
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26870459
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上村 修司 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 講師 (60448561)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フルクトース / 慢性腸炎 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
フルクトースはソフトドリンクや加工食品に頻用されている添加糖で、本邦での消費量が急増し、その過剰摂取は肥満、脂肪肝や動脈硬化を誘発している。 本研究で、通常のマウスに高フルクトース摂食させることにより、軽度の腸炎を誘導することを見出した。さらにマウス慢性腸炎モデルにおいて、フルクトースは体重減少、腸管長の短縮、腸炎を悪化させた。その機序として、フルクトースは炎症性サイトカインであるIL-6、IL-1β、TNF-αの発現を亢進させたのみならず、細胞間接着分子の機能を阻害し、腸管の透過性亢進を促進した。また、フクルトースはマウス慢性腸炎モデルの腸内細菌数、特にBacteroides属の数とその比率を増加させた。このようにフルクトースは細胞間接着関連分子影響し腸管バリア機能を破綻させ、腸内細菌数を増加することで腸炎を悪化させている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで肥満や脂肪肝など、主に代謝性疾患に影響していると考えられていたフルクトースの腸管への影響を明らかにした。マウス慢性腸炎モデルを用いることで、フルクトースの過量摂取は腸管バリア機能を破綻させ、粘膜下層に浸潤している炎症細胞から発現するサイトカインを上昇させ、腸炎を悪化させている。このように日常生活で口にする機会の多いフルクトースの過量摂取の危険性が明らかになることで、生活習慣病の予防につながる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書では、大腸オルガノイドを使用し、細胞内増殖シグナル伝達系(Ras/ERK系)や細胞増殖試験を行う予定であった。しかし、フルクトースが細胞間接着関連分子の発現に影響を与えることがわかったことより、接着関連分子の解析に用いられるマウスもしくはヒト結腸細胞株(Colon-26、HT-29)などの上皮系細胞株により、細胞間接着関連分子の発現をタンパク質やメッセージレベルで解析することとする。その他、これまでの研究成果をまとめ、学会と論文発表を行う予定である。
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