2014 Fiscal Year Research-status Report
機能的絶滅の閾値を予測する:種子散布者の生息密度が植物の群集構造に与える影響
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26870461
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中本 敦 琉球大学, 大学教育センター, 非常勤講師 (80548339)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クビワオオコウモリ / 機能的絶滅 / 種子散布 / 送粉 / 植物群集 / 分布 / 琉球列島 / 島嶼生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クビワオオコウモリの生息密度が様々に異なる琉球列島おいて、共生関係にある動物と植物の密度を島単位でそれぞれ推定し、その対応関係を見ることで、生物間の相互作用が正常に機能するには、それぞれがどの程度の生息密度で存在する必要があるかを明らかにすることを目的にしている。これらは健全な生態系を維持していくための適正な生息密度の把握につながり、機能的絶滅の観点から個体数回復の目標値をどのように設定すべきかといった生態系の保全に役立てることができる。 本研究では、1、琉球列島のオオコウモリの分布・密度を島レベルで推定、2、琉球列島の植物の分布・密度を島レベルで推定、3、送粉者や種子散布者の機能が失われる生息密度(機能的絶滅が生じる閾値)の算出、を行う計画である。 今年度は3年計画の初年度であるが、沖縄諸島14島、奄美諸島3島、大東諸島2島、宮古諸島2島の計21島で野外調査を実施し、オオコウモリの分布・生息状況と餌植物の分布・生育状況に関するデータを得た。また調査対象面積の広い鹿児島本土では野外調査の実施地点を絞り込むための予備調査を行った。取得したデータの解析は島嶼群ごとに進めていく予定であるが、すべての島のデータが出揃ってからの解析となるため、結果が出るのは来年度以降になる。これまでに生息個体数が推定されている大東諸島の2島に関しては、今回のデータをもとにしたGIS解析によって個体数の推定を行い、その推定精度を確かめた。 文献調査に関しては、琉球列島の植物の分布(在・不在データ)に関する文献収集を行っているところであり、随時パソコンへのデータ入力(デジタル化)を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
十分な調査日数が確保できなかったため、当初の予定の6割程度の島でしか野外調査を実施できていない。雨などの悪天候は推定個体数の精度を大きく左右するため、本研究のような短期間の訪島調査では可能な限り避けなくてはならないが、今年度は出張直前に天候が目まぐるしく変わることがあり、出張日の確定や変更に手間取り、結果的に訪島数が少なくなってしまった。また、2014年度は北琉球で調査を実施する予定であったが、北琉球個体群のソースであると考えられる口永良部島で2014年8月に大規模な噴火があったため急遽予定を変更せざるを得なくなった。ただし、これらの野外調査の実施の遅れは想定内であり、当初の予定から3年目を野外調査の予備調査年に充てているので、研究の実施に大きな障害とはならない。2015年度は可能な限り野外調査を効率よく進め、なるべく最終年度に野外調査を持ち越さないように心掛けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き野外調査を実施する予定である。次年度は、オオコウモリが頻繁に島嶼間の移動を行っていると思われる宮古・八重山諸島を中心にまとまった野外調査を実施する。またオオコウモリ不在の島の多いトカラ列島と奄美諸島に関しては、天候を見ながら効率の良い短期の訪島スケジュールを立てて、随時未調査分を実施したい。また今年度の調査実施を見送った北琉球に関しては、火山の活動状況を見ながら調査を2015年度に行うか、2016年度に行うかを判断したい。過去に分布調査を実施しており、かつ、島へのアクセスが比較的容易で調査日程を調整しやすい沖縄諸島の島々に関しては、まとまった野外調査の実施をあきらめ(島嶼間の移動による個体数の変動には複数回の調査で対応)、悪天候などの他地域の調査スケジュールの変更で生じた日程の空白期に随時調査を実施することで、調査地全体のスケジュール調整に用いたい。
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Causes of Carryover |
天候不良や調査日程の調整不足による野外調査全体の実施の進行の遅れによって、初年度分の予算に未使用分が生じた。さらに口永良部島での火山の噴火によって、大隅諸島・トカラ列島での野外調査が次年度以降に延期されたことで、無人島調査で予定されていた謝金(調査補助)の支払いが生じなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の未使用分は次年度分と合わせて、野外調査を効率よく進めていくことで使用する計画である。離島での野外調査の実施は、台風や雨天などの悪天候によって臨機応変に日程を調整することが必要であるが、非常勤講師の場合、エフォートの配分よりむしろ講義日が実質的に固定されていることによる日程変更の困難さが問題となる。この点に関してはアクセスの容易な沖縄諸島での調査をうまく組み合わせることで全体の調査スケジュールを調整したい。 物品に関しては、現時点で調査に必要なものは、細かな消耗品以外はほぼ買い揃えることができている。
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Research Products
(1 results)