2014 Fiscal Year Research-status Report
米国における高等教育の障害者支援―社会モデルに基づく合理的配慮に着目して
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26870466
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
吉田 仁美 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (20566385)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高等教育 / ジェンダー / 障害者支援 / ユニバーサルデザイン / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、第一に、主に内外の文献収集につとめた。その際には統計情報も収集し、現在、文献を整理し、分析を行っている。さらに、ジェンダー視点による分析も可能になるように資料を収集した。第二に、日本社会福祉学会で本研究の一部を発表した。日本社会福祉学会では「米国における高等教育の障害者支援」について発表し、米国の法制度、米国の障害学生について統計資料による分析、教育のユニバーサルデザインの考え方、大学の支援システム、合理的配慮の提供のプロセス等を発表内容に盛り込んだ。第三に、本研究はジェンダー視点も取り入れているが、最新の動向を把握するためにも関係者と研究会を開催し、情報交換を行った。具体的には、「障害とジェンダーに関する研究会」を開催し、ジェンダー統計、教育とジェンダーの接点をつくるために必要なことについて発表・意見交換をした。また、本研究において国際的な視野から積極的にジェンダー視点を取り入れるためにも、ジェンダー統計を活用し、分析の指標にしている。これについては日米だけでなく、ヨーロッパの統計も参考にし、分析の材料としている。第四に、大学へヒアリングを実施した。実際に障害者支援にかかわっている教員にヒアリングをし、今後の研究の材料に生かす予定である。現在、障害者支援の関心が身体障害者から、発達・精神障害者へシフトしつつあるが、これらの障害をもつ学生に対してどのような支援が必要か、今後、慎重に検討する必要があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、テーマに沿って障害種別、性別に応じた合理的配慮にはどのようなものが必要であるかを具体的に文献・最新の事例等から明らかにすることを目的のひとつにおいてある。 第一に、文献、統計の資料収集の一部を行っており、ジェンダー視点を積極的に取り入れることを意識して資料にアクセスしている。現在、分析継続中だが、この点は計画に沿って進んでいるといえる。しかし、もっと多くの米国の文献や統計資料にアクセスする必要性は感じている。それから統計情報に関しては日米に限らず、世界各国のデータを使用して分析する必要性を感じている。 第二に、平成26年度の研究計画に予定していた米国の学会に参加できなかったことが課題として残されている。なお、米国の学会参加については次年度を予定している。 第三に、日本の大学の障害者支援の関係者や専門家へヒアリングを実施した。ヒアリングをした結果、現在の障害者支援の現実や課題点が浮かび上がったが、具体的な対策案は示しきれていない。この点が課題として残されている。 以上の点から交付申請書に照らして、「やや遅れている」という評価になる。
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Strategy for Future Research Activity |
障害者やマイノリティ、多様な社会人の大学へのアクセスや環境構築は、近年、UNESCOのEducation for Allのスローガンに照らして、また、日本においても少子・高齢社会の進展に伴い、障害者の社会参画を前提とした教育の充実がますます求められている。この一連の流れを受けて、本研究では、世界で最も障害者支援が進んでいるといわれる米国(規模、支援システム、経験のいずれにおいても)をモデルに、障害の種別や性別に応じた支援にはどのようなものが必要とされるかを事例等から考察し、高等教育における障害者支援における合理的配慮の限界と可能性を探ることを目的としている。 具体的には、第一に、内外の文献、統計資料等を用いて、分析・検討し、第二に、米国の学会および展示会、シンポジウムに参加し、最新の動向を把握する。 その際には、第一に、本研究にジェンダー視点を積極的に導入し、分析・考察の材料となりうる障害者ジェンダー統計を活用する。とりわけ、米国は障害とジェンダー研究が進んでいる国であるので、日本に示唆を与える研究成果を出してゆきたい。第二に、最新のICTの活用の視点を取り入れる。現在、障害者支援にICTが導入されているが、これについてはどういった機器のものがどの障害の種類に使用されていて、障害者のニーズに合ったものになっているか、教育現場での導入のプロセスを含めてみてゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた米国の学会参加が大学の業務の都合上、参加できなかった。そのため、平成27年度に米国の学会参加費(旅費、宿泊費、学会参加費等を含む)を計上する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は平成26年度に引き続き、研究内容をより具体的に発展させるために、文献資料収集、米国学会参加、国内での学会報告、論文投稿を実施する予定である。 本研究に関連して、米国のみならず、国際的な視点から日本の課題との比較検討を行うため、ヨーロッパ諸国の政策内容と現状を把握する必要があると考えている。そのための資料収集、各種研究会、シンポジウム、関連学会への参加等を予定している。よってそれにかかわる経費が必要である。 それから学会発表・報告、投稿論文投稿執筆にかかわる諸経費も必要である。具体的には学会報告のために学会参加費、旅費、投稿論文執筆に際し、論文投稿料、掲載料、事務用品の購入等のを使用予定である。そのほか、文献資料収集に際し、アルバイトで資料整理業務を依頼する予定である。
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Research Products
(5 results)