2014 Fiscal Year Research-status Report
画期的技術を用いて合成した自己磁性タキソールを用いた新しい乳がん治療
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26870481
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50595353)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁性体 / タキソール / パクリタキセル / ドラッグデリバリー / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は医工連携においてIHI(株)の持つ機能材料設計に用いられるコンピュータシミュレーション技術を医学に転用することで医薬品化合物の磁性を予測し,その化合物を磁性化する設計技術を開発した。その結果,鉄錯体の一種(以下,Fe(Salen))が磁性有機化合物であると同時に,強い抗がん活性を持つことを突き止めた。 我々はその有機化合物の磁性発生メカニズムを解析するため,大型放射光施設(SPring-8)を用いて,詳細な結晶構造解析を行うことで,磁場発生構造のエッセンシャルポーションを同定した。この構造は意外にも,古典的な物理理論として昔から知られるGoodenough-Kanamori-Anderson ruleで説明できることが分かり,この化合物のもつ酸素原子を介した2つの鉄イオンがおりなす角度が重要であることが分かった。つまりこの理論によるとFe-O-Feのなす角度が90°に近いほど磁性が大きく,180°に近ければ近いほど磁性は持たなくなるという。これらの事実を,申請者らは2015年にScientific Reports誌に報告した。 このエッセンシャルポーションを市販のタキソールに付与することで,市販のタキソール(パクリタキセル)の薬効成分自体を磁性化することに世界で初めて成功した。タキソールの持つ抗がん活性に加え,磁性を持つという特徴があることで,磁石を用いて体外からこの有機磁性化合物を任意の場所に集積させること(ドラッグデリバリー)が可能であり,さらに,その化合物をMRIで撮影できる。MRIに写ることで薬剤の局在や濃度の推定ができることが期待できる。 本研究はこの磁性タキソールを用いて磁性という特徴を生かした新しい乳がん治療を開発することが目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性タキソールの抗癌作用が磁性化後も保持されているかどうかを評価するため,乳がん,卵巣がん,舌癌などのセルラインを用いてXTTアッセイで抗腫瘍効果を評価し,保持されていることを確認した。また,磁性タキソールは濃度依存的にがん細胞に対して,アポトーシス誘導効果を確認した。また,磁性タキソールは細胞周期をG2/M期で停止させるという報告があるため,乳がん細胞を用いて磁性タキソールの細胞周期への影響を調べたところ,市販タキソールと同様にG2/M期に収束させることを確認した。 また,磁性は微細な磁気を測定できる超高感度磁気センサであるSQUID(Superconducting QUantum Interference Device)を用いて,実際に合成した磁性タキソールが磁性を持つことを確認した。MRIにて磁性タキソールを撮影し,濃度依存的にT2強調画像で黒く写ることを確認した。 また,我々はその磁性タキソールの磁性発生メカニズムを解析するため,大型放射光施設(SPring-8)を用いて,結晶構造解析を施行中である。 Up-down testを施行し,磁性タキソールの致死量の推定を行った。 上記のようにおおむね順調に進展はしているが,交流磁場下での磁性タキソールの挙動に関してはまだ,十分に進んでおらず,そちらの検討も必要だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
磁性タキソールが乳がん細胞をはじめとした,卵巣がん細胞,扁平上皮癌細胞などの複数のがん細胞に対して,強い抗腫瘍効果を示すことはすでに確認している。 そこでまず,乳がんモデルを用いて磁石付ジャケット(磁気サポーター)を用いて,マウスの体外から磁石で磁性タキソールを任意に局所集積させることができることを確認する。その後,疾患モデルマウスを使用して,実際に磁気サポーターで磁性タキソールの挙動をコントロールし,腫瘍に薬剤血中濃度を高めることで,より高い治療効果が得られることを確認する。また,実験後は腫瘍を回収し,組織学的,病理学的評価も行っていく。 将来的には本薬剤を使って副作用が少なく,効果の高い乳がん治療法の開発を行い,臨床化を目指す。また,毒性評価も培養細胞や動物を用いて継続して評価していく。 タキソールは難溶性のため,磁性タキソールも同様に難溶性である。そのため,粒子を均一に粉砕することや,分散剤などを使用し,溶解した際に均一にすることを目指していく。 また,今後は磁性タキソールの結晶構造解析の結果がでれば,磁性メカニズムをより詳細に検討し,より磁性が強い第二世代の磁性タキソールの開発も行っていく予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Hyperthermia generated with ferucarbotran (Resovist) in an alternating magnetic field enhances cisplatin-induced apoptosis of cultured human oral cancer cells2014
Author(s)
Itaru Sato, Masanari Umemura, Kenji Mitsudo, Mitomu Kioi, Hideyuki Nakashima, Toshinori Iwai, Xianfeng Feng, Kayoko Oda, Akiyoshi Miyajima, Ayako Makino, Maki Iwai, Takayuki Fujita, Utako Yokoyama, Satoshi Okumura, Motohiko Sato, Haruki Eguchi, Iwai Tohnai and Yoshihiro Ishikawa.
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Journal Title
The Journal of Physiological Sciences
Volume: 64
Pages: 177-183
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 市販医薬品の薬効成分の磁性化にむけて2015
Author(s)
梅村将就,勝亦真弓,小田香代子,佐藤格, 大竹誠, 青山春樹, 江口晴樹, 石川義弘.
Organizer
遺伝子・デリバリー研究会 第15回 シンポジウム
Place of Presentation
京都薬科大学(京都府京都市)
Year and Date
2015-05-01
Invited
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[Presentation] A novel treatment for triple-negative breast cancer using intrinsic magnetized paclitaxel.2014
Author(s)
Masanari Umemura, Ayako Makino, Itaru Sato, Xianfeng Feng, Maki Iwai, Kayoko Ito, Akiyoshi Miyajima, Makoto Otake, Akane Nagasako, Kosuke Matsuo, Haruki Eguchi, and Yoshihiro Ishikawa.
Organizer
The 105 American Association for Cancer Research Annual meeting
Place of Presentation
San Diego, U.S.A.
Year and Date
2014-04-07 – 2014-04-11