2015 Fiscal Year Research-status Report
画期的技術を用いて合成した自己磁性タキソールを用いた新しい乳がん治療
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26870481
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50595353)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 磁性化 / タキソール / パクリタキセル / 創薬 / 医工連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
4つの事項について検討を行った。一つ目は磁性化に成功したタキソール(以下,磁性タキソール)が磁性を有するかの検討を行った。二つ目に磁性タキソールの抗腫瘍効果の検討,三つ目に磁性タキソールの作用機序を市販タキソールを用いて、比較検討を行った。四つ目にモデル疾患動物を使用した磁性タキソールの効果の評価を行った。 まず、抗腫瘍効果の検討では既存のタキソールとの効果の比較をするために乳がん細胞を始めとした、複数の培養がん細胞で、XTT assayを用いて薬剤を投与し、抗腫瘍効果を評価した。その結果、磁性タキソールは市販タキソールと同様に抗腫瘍効果を示すことが分かった。さらに、アポトーシス誘導効果の比較も行った。磁性タキソールをがん細胞に投与後、アポトーシス誘導効果をFlow cytometry (FACS)を用いて比較し、濃度依存的にアポトーシス誘導効果をしめすことがわかった。 三つ目に磁性タキソールの作用機序の比較検討を行った。市販タキソールは微小管の脱重合阻害を行い、また、細胞周期においてはG2/M期に集束するという報告があることから,磁性タキソールでも同様の性質を持つかを複数のがん細胞で検討した。その結果、市販タキソールを同様に、G2/M期で集束しており、同じ傾向を示した。磁性タキソールは磁性後も多岐ソールの性質を保持していることが分かった。 四つ目のモデル疾患動物を用いた磁性タキソールの効果の検討では,舌がん細胞を,免疫不全ヌードマウスの背部皮下に移植し,がんモデルマウスを作成した。これを用いて生体内で体外からの磁石により,静脈投与した薬剤が局所に集められるかの検討を行った。その結果、体外から磁石を用いることで薬剤が局所に集められることがわかった。また、磁性タキソールを尾静脈注射をした際に、磁石を用いることで薬剤の効果が増強するかの検討を行い、効果があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性タキソールは我々が独自に同定した磁場発生構造を市販タキソールに付加することで,磁性という特徴が得られたことにより,磁石で局所に薬剤を集積させることができる。このことは本研究での検討により、in vitro,in vivoにおいても証明することができた。この結果は、「生体内でもその磁力を失わず効果を発現できること」を示唆する。特に、in vivoにおいて任意の場所に磁石を体外から付加することにより、その場所に薬剤を実際に集積させることが可能であることがわかったことにより、当初期待していた通り、薬剤を目的とする局所に集中的に奏功させることができる(ドラッグデリバリー)と思われる。それにより薬剤の持つ副作用の軽減が大いに期待できる。 また,磁性タキソールの抗腫瘍効果に関しては既存のタキソールに遜色ない効果を示しており、効果に関しても市販タキソールと同様の腫瘍抑制効果があることが示唆された。 また,FACSを用いて複数のがん細胞に投与した磁性タキソールが、細胞周期にどのような影響を及ぼしているかを確認したが、得られた結果から市販タキソールと同様のメカニズムで抗腫瘍効果が示していることが分かった。このことは市販タキソールと同様のメカニズムによって,効果を示しており、磁性化後も性質は変わっていないことを意味する。 また、現在は当初の目標であるがんモデルマウスを持いて実際にがんモデルマウスに対して、磁性タキソールでの治療群を2群に分け、我々が独自に開発した磁石付ジャケットを用いて磁石を印加した群と、用いずに印加しなかった群での治療効果の比較検討を行っている。その結果、未治療群と比較し、磁性タキソール+磁石印加群は、磁性タキソールのみ(非印加群)の群より、腫瘍縮小効果が高いことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoにおいて生体内で磁石に集積したことがわかったことにより、当初期待していた通り、「薬剤を目的とする局所に集中的に奏功させることができる」と思われる。ただし,今後もどのような形での磁石印加が効果的か,などの条件検討が必要だと思われる。 また、タキソールにおいて問題となっているのは静脈投与した際の神経障害による投薬制限である。そのため、磁石を用いることで、より効率的に抗腫瘍効果を発現することができれば,患者への全身的負担を大きく軽減することにつながると考えている。そのためには磁石によって集積した薬剤の抗腫瘍効果を客観的に数値化して評価する必要があり,磁石を用いることで,用いない時と比べてどれくらいの薬剤が減量できるか数値化して示していく必要がある。そのためには、磁性を獲得したことで、磁性タキソールはMRIに写るようになったため、MRIを用いた局所の濃度推定や分布推定システムの確立が必要になってくる。この点については,放医学研究所との共同研究により,引き続き本年度も進めて行く。 また,付加した磁場発生構造が市販タキソールにはない副作用や体内動態への悪影響がないかなども,RIで磁性タキソールを標識し、生体での体内動態をマウスなどを用いてさらに評価していく必要があると思われる。 今後は、この市販医薬品を磁性化する技術を他の市販薬剤にも順次応用していくことができればと考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Simultaneous hyperthermia-chemotherapy with controlled drug delivery using single-drug nanoparticles2016
Author(s)
Itaru Sato, Masanari Umemura, Kenji Mitsudo, Hidenobu Fukumura, Jeong-Hwan Kim, Yujiro Hoshino Hideyuki Nakashima, Mitomu Kioi, Rina Nakakaji, Motohiko Sato, Takayuki Fujita, Utako Yokoyama, Satoshi Okumura, Hisashi Oshiro, Haruki Eguchi, Iwai Tohnai and Yoshihiro Ishikawa.
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Journal Title
Scientific reports
Volume: 6
Pages: 24629
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 市販医薬品の薬効成分の磁性化にむけて2015
Author(s)
梅村将就,勝亦真弓,小田香代子,佐藤格, 大竹誠, 青山春樹, 江口晴樹, 石川義弘.
Organizer
遺伝子・デリバリー研究会 第15回 シンポジウム
Place of Presentation
京都薬科大学 (京都府京都市)
Year and Date
2015-05-01
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