2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870485
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
水口 亜樹 福井県立大学, 生物資源学部, 講師 (00635831)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 撹乱 / 適応 / 雑草 / 生活史 / 冬 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は、長い歴史の中で生育地の気候に適応したことで、同じ種でも異なる時期に芽を出したり、花を咲かせたりと生活史に多様性を持っている。雑草は短い歴史の中で農作業による人間の不定期な撹乱(刈取りや耕起など)に適応した結果、生活史に多様性を持つ。すなわち雑草は、気候への適応と人為的撹乱への適応の両方の結果を併せ持っていると考えられる。 本研究は、田んぼでよく見る雑草3種を材料に、異なる地域間や同じ地域の違う場所間での生活史を比較することで、気候、特に積雪など“冬”への適応の結果が見いだせるかどうかを明らかにすることを目的とする。その際、同じ地域内で撹乱時期が異なる複数の田んぼを調査することで、気候への適応と撹乱への適応を分けて考えられるように工夫する。また、同じ環境条件下でポット栽培を行い、現地での生活史と比較することで、現地で見られる生活史のバラつきが、単に環境に対する反応の結果なのか、生まれつきの個性の違いによるものなのか、について検討する。 本年度は、秋田県、福井県、宮崎県の各地域6箇所において、雑草3種(メヒシバ、エノコログサ、イヌビエ)の種子を収集するとともに、現地での種子稔実程度や撹乱状況を記録した。その結果、宮崎県では9月末、福井県では10月初~中旬、秋田県では10月中旬頃に3種とも稔実種子が得られたが、稲刈り前に畦畔の刈取りがなされた場所では、その後に発生、出穂したと考えられる個体が生育しており、これらの穂はまだ未熟で結実率は低いことが観察された。つまり現地での種子散布時期は、人為的撹乱に依存して変異が大きいことがわかった。また、採取した種子から結実したものを精製し、発芽試験を開始した。発芽試験の全てのデータが出揃い次第、発芽0点(種子が発芽しなくなる温度)を求め、採種地の気象データと合わせて、現地での出芽時期を予測する計算式を作成する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、秋田県、福井県、宮崎県の各県6箇所において、農地畦畔の優占雑草種3種(メヒシバ、エノコログサ、イヌビエ)の種子を収集するとともに、現地での種子稔実程度と撹乱状況を記録した。採取した種子から結実したものを精製し、発芽試験を開始した。種子の精製に予定していたより時間がかかり、発芽試験の開始が遅れたが、平成27年6月中には試験および出芽時期の予測を終える予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度、調査を予定していた8地域を削減し3地域を対象とした。理由は、今後、1調査地での滞在期間を長くし、同地域内でより多くの箇所を観察しなければ、地域内の変異の大きさを十分把握できないと判断したためである。そのため、現地での観察時期は秋の種子散布時期を中心とし、1地域で30箇所以上での観察および種子採取を行う予定とする。また、平成26年度に採取した種子を福井県立大学キャンパス内の圃場にて同一環境条件下で播種、栽培し、生活史特性を調査する。この栽培で得られる種子は、母性効果(母個体の生育した環境により子の表現型が影響を受けること)が排除されていると考えられるため、再度、これらの種子について発芽試験(温度設定5段階;15,20,25,30,35℃一定)を行い、出芽期予測の計算精度を高める。さらに平成27年度に採取する種子についても同様の発芽試験を行い、発芽0点の変異を把握する。 “冬”への適応を検出するためには、各地において種子散布が可能な限界時期を知る必要がある。種子散布時期は人為的撹乱に依存して変異が大きいため、対象とする3つの現地で明らかにするのは難しい。そこで、福井県における限界時期を詳細に調査するとともに、播種日を数段階に遅らせることで限界時期を求めるポット試験を追加する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度調査を予定していた8地域を削減し3地域を対象とすることで、1地域での調査にかかる旅費および種子精製にかかる人件費・謝金を増額し、その差額を次年度旅費として残したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1地域での調査箇所を増やすことによる旅費の増額分として使用する。
|
Research Products
(1 results)