2014 Fiscal Year Research-status Report
視聴環境の違いによる長時間立体映像視聴時に生じる酔いの機序解明と予防に関する研究
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26870490
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
松浦 康之 名古屋市立大学, その他の研究科, 研究員 (30551212)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 立体映像視聴 / 長時間曝露 / 自律神経 / 視聴環境 / 重心動揺 / 数理解析 / 胃電図 / 動揺病 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、立体映像の技術が進歩し、映画やテレビ、ゲームなど立体映像を視聴する機会が増えている。しかし、立体映像はその視聴によって、めまいや眼精疲労などの不快な症状を引き起こすことが報告されている。立体映像が身体へ及ぼす影響に関する知見が十分にあるという状況になく、発生機序も明確でないため、さらなる研究が必要であるとされている。そこで、今年度は、若年健常者を対象として、胃電図、座位重心動揺検査、主観的評価(Simulator Sickness Questionnaire, SSQ))により多角的に長時間立体映像視聴が身体に及ぼす影響について検討した。実験では、円偏光用ディスプレイ上に視覚刺激用立体映像と、2D映像を提示した。なお、映像の提示順についてはランダムとし、それぞれの映像を提示する実験は別の日に行うものとした。胃電図解析では、スペクトル解析から求められる中心周波数やパワー値によって評価を行ってきたが、これらの解析結果から取り出せる情報量は多くない。そこで、既存のスペクトル解析に加え、複雑系解析を用いることによって、情報を抽出した。また、重心動揺検査は立位による計測が一般的である。しかし、乗り物酔い、映像酔いなど座位時に酔いが発生する例も多い。そこで、既存の評価手法を用いて、座位重心動揺の評価を行った。また、主観的評価として映像酔いを評価する上で最もよく知られている心理的計測手法の一つであるSSQを用いた。その結果、胃電図については、視聴映像に依らず視聴前と比較して視聴開始後5分時に有意差がみられた。一方、重心動揺検査については、視聴開始後60分時において2D映像視聴時と立体映像視聴時の動揺量に差がみられた。このことから、立体映像視聴は自律神経系に影響を及ぼし、また、体平衡系でも影響がみられると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若年健常者を対象とする実証研究で計測を終えた例数が目標を下回っているものの、次年度以降に行う予定の分析に着手し、いくつかの研究成果につながっている。研究代表者はこれまで短時間(1~3分間)の3D映像視認が体平衡系に与える影響について検討を行い、動揺図の数理解析によって軽度の「3D酔い」の計量化について知見を得ている。また、胃電図を用いた自律神経系の評価指標についても、知見を得ている。本研究では、長時間(1~2時間)の立体映像視認が生体に与える影響について調査、検討を行い、3D酔いの発生機序の解明、3D酔いの計量化・指標の提案を主たる目標としている。研究代表者は今年度に実施した実証実験を踏まえて、数理解析・統計解析を行った結果、基礎的知見が少ない立体映像視聴時の胃電図の解析結果について、一定の結果が得られた。また、座位重心動揺の解析結果から、自律神経系と体平衡系に及ぼす影響についても、成果が得られることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、胃電図検査、座位重心動揺および主観評価検査において、立体映像視聴後にいくつかの指標が有意に増大しており、立体映像視認に伴う「眼疲労」や「映像酔い」が生じ始めている可能性がある。今年度は、実験例数の増加とともに、脳波やNIRSを用いた脳機能評価を行い、「眼疲労」や「映像酔い」が生じる機序を明らかにする。また、これらの実験・解析結果を受けて、3D酔いの計量化・指標の提案に着手したい。その上で、20例以上の若年健常者を対象とした実証研究を行い、安全な立体映像の視聴に関するガイドラインを提言することを目標とする。また、立体映像視認に伴う「眼疲労」や「映像酔い」については、映像を注視する際の視線の固定などが起因することも考えられることから、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用した追加実験も行う予定である。ここで、映像の提示順についてはランダムとし、それぞれの映像を提示する実験は別の日に行う。実験プロトコルは基本的には現行のものに従うが、計測間隔の見直し、立体映像曝露時間の短縮化や検査項目の簡略化を行う可能性がある。以上の実証実験に関する統計解析および数理解析を行う。得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
当該度末に予定していた研究打ち合わせが、急遽、先方の都合で中止となったため、使用額の変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属機関の変更に伴い、生体計測関連の消耗品の購入が想定より多くなる見込みである。そのため、変更が生じた使用額については、生体計測関連消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)