2014 Fiscal Year Research-status Report
レヴィ小体 in vivo 再現モデルを用いた神経変性伝播経路の解析
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26870494
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
田口 勝敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60462701)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | alpha-Synuclein / Parkinson's disease / Synapse / Inhibitory neuron / Basal ganglia circuit |
Outline of Annual Research Achievements |
alpha-Synuclein(以下、aSyn)はパーキンソン病に特徴的なレヴィ小体の主要構成分子である。また、aSynは正常な脳内にも発現しており、前シナプス部に局在することが知られている。病状が進行するにつれて、レヴィ小体を伴った神経変性は下部脳幹から上向性に大脳皮質にまで至る。この神経変性の伝播には病原性aSynの細胞間伝播が示唆されているが、その伝播経路の詳細は現在のところ不明な点が多い。これまでにレヴィ小体の形成には内在性aSynの発現が不可欠であること、更にその高い発現が神経変性の危険因子であることが報告されている。本研究では、in vivo実験系を用いた伝播経路の同定を最終目的に定め、これを達成するために当該年度はaSynの脳内発現についての詳細な解析を行った。本研究代表者はこれまでに、海馬ではaSynの内在性発現が興奮性神経に限局され、抑制性神経ではその発現が非常に低いことを報告している。したがって、aSynの脳内発現マッピングを行う過程において、その発現量と共に、興奮性神経あるいは抑制性神経での発現プロファイリングを脳内各部位で実施した。その結果、パーキンソン病の進行に伴って障害を受けやすい脳領域のうち、複数の個所でaSynの内在性発現が非常に高いことを見出した。更に、aSynは脳内の広い領域において普遍的に興奮性神経終末に発現している一方、抑制性神経終末における発現は脳部位で大きく異なることを見出した。以上の結果はaSynの発現が脳部位に依存した多様性を有していることを示している。本内容は神経変性伝播経路を特定するにあたって非常に有用な情報と位置付けることが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はパーキンソン病における神経変性の脳内伝播経路について、in vivo実験系を用いて同定することを目的としている。その過程において、aSynの脳内発現プロファイリングは必要不可欠な情報であると共に、主要な研究項目の一つと位置付けることが出来る。当該年度では、aSynの発現を各脳部位で細胞種(興奮性あるいは抑制性)の違いに着目しながら詳細に解析し、マッピングすることを中心に実施したが、この解析をほぼ終えることが出来た。更に、aSynの抑制性神経終末における発現には脳部位依存的な多様性があることを見出すことができた。脳部位に依存して抑制性神経でaSynの発現に多様性が存在することは、今後の神経変性の伝播経路を同定する上で重要な足がかりになる。したがって、実験計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、精製したaSyn単量体をin vitroで高分子化させたFibril様aSyn(以下、Fb)を用いて培養神経細胞内にレヴィ小体様の凝集体を形成・再現できることを既に確認している。今後は、Fbを黒質、線条体、あるいは当該年度の解析で明らかになったaSyn高発現部位に脳内投与を行い、神経変性の伝播・拡大する過程を経時的に追跡する。その際、各脳部位での興奮性あるいは抑制性神経終末における変性具合も併せて観察する。また、Fbを投与する脳部位の違いによって生じる神経変性の伝播効率の差についても検討を加える。 次に、上記の実験で得られた結果を基に、変性の伝播経路に位置する脳部位にaSynの内在性発現をノックダウンさせるように設計したshRNA-AAV(アデノ随伴ウイルスベクター)を投与したマウス脳を用いて、最も効果的に神経変性の伝播を抑制する部位を特定する。 以上を次年度の中心課題と位置付けている。
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