2014 Fiscal Year Research-status Report
痒みを特異的に伝達する脳-脊髄神経ネットワークの同定
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26870496
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
高浪 景子 京都府立医科大学, 医学部, プロジェクト研究員 (70578830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 痒み / 神経回路 / 神経解剖学 / 三次元電子顕微鏡 / 超高圧電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで痛みとの多くの類似性により、痒み特異的分子基盤が不明であったが、2007年に感覚神経系gastrin-releasing peptide receptor (GRPR)が初めて痒み受容器として報告され、以降、痒みの伝達に関わる様々な分子の報告がなされている。研究代表者はこれまで、GRPRのリガンドであるgastrin-releasing peptide (GRP)に着目し、感覚神経系における局在と投射先を明らかにしてきた。本研究では、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、超高圧電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、三次元電子顕微鏡などの各種顕微鏡を用いて、GRPをターゲットとした痒み伝達神経回路の解明を目的とする。今回、近年開発された三次元電子顕微鏡のひとつである連続ブロック表面走査型電子顕微鏡に、これまで確立してきた免疫電子顕微鏡法を応用し、痒み伝達神経終末の三次元超微形態解析を実施した。その結果、免疫組織化学法、重金属染色法、試料作製法の改良を試み、脊髄後角における痒み伝達神経終末の三次元観察が可能となり、現在、セグメンテーションを実施中である。過去の透過型電子顕微鏡を用いた脊髄後角神経ネットワーク解析から得られる情報は二次元的であったため、今回の三次元構造解析の結果から、新たなシナプス構造が見出されている。また、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡試料作製に用いる重金属染色を、超高圧電子顕微鏡の試料作製に応用したところ、試料の厚みとコントラストの問題が解決され、超高圧電子顕微鏡においてもシナプスの構造解析が可能となった。形態学解析と並行して、痒み関連分子をターゲットとした遺伝子改変動物のキャラクタライゼーションを実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、三次元電子顕微鏡のひとつである連続ブロック表面走査型電子顕微鏡に、目的分子を標識する免疫組織化学法を応用した技術を確立することができ、研究はおおむね順調に進んでいる。また、三次元電子顕微鏡用の試料作製方法を超高圧電子顕微鏡に応用し、超高圧電子顕微鏡に用いる数マイクロメーターの厚みの試料においても、試料の厚みとコントラストの問題が解決され、神経ネットワークとシナプス構造の解析が可能となり、現在論文にまとめている。しかし、三次元電子顕微鏡観察後の画像のセグメンテーションは数百から数千枚単位をマニュアルで行うため、予想を大きく上回る解析時間が必要となっている。現在、解析を継続中であるが、このため、痒み関連分子をターゲットとした遺伝子改変動物を用いる研究が、キャラクタライゼーションに留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度に観察した痒み伝達神経終末の三次元再構築を完成させ、痒みを伝達するシナプスの構成要素の割合と痒み刺激時の変化を調べる。さらに、二重免疫組織化学法を三次元電子顕微鏡に応用し、痒み伝達メカニズムを超微形態から明らかにする。また、現在キャラクタライゼーション中の遺伝子改変動物を用いて、痒みの指標となる掻破行動解析と組織学解析から、痒みを脊髄から脳へ伝える神経回路の同定を行う。
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