2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870507
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
高木 悠平 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (80648973)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 星・惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
普遍的な星・惑星の形成過程を明らかにするためには、形成過程にある前主系列星の年齢を正確に求めることが非常に重要である。本研究の主な目的は、高分散分光観測によって前主系列星の表面重力を求め、それをもとに年齢を決定し、星・原始惑星系円盤・惑星の形成過程の理解を深めることである。分光観測による中心星の表面重力の決定は、星までの距離、減光量、ベーリングに依存することなく行えるため、従来の測光観測による方法より正確な年齢を求めることができる。 この分光的手法を用い、おうし座分子雲とへびつかい座分子雲に属する前主系列星の年齢を決定した結果、前者の領域では240万年で、後者は120万年で円盤が散逸することが判明した。当該年度はさらに近赤外線で高分散分光観測を行い、へびつかい座分子雲に深く埋もれる前主系列星を観測した。その結果、へびつかい座分子雲ではより深く分子雲に埋もれた星ほど原始惑星系円盤の寿命が長い傾向が示唆された。これは、分子雲の周辺に存在する大質量星からの輻射が届きにくい分子雲内部では原始惑星系円盤がより長時間存在することができるという可能性を示している。 当該年度はさらに、FU Ori型星の長期分光モニター観測に関する結果をまとめ、論文を発表した。FU Ori型星は、原始惑星系円盤からの質量降着率が大幅に増大した際に起こる増光現象で、原始惑星系円盤の進化を理解する上で重要な天体であるが、まだその理解は乏しい。2014年より2年間に渡る分光モニター観測を行なった結果、これまでに観測事例のなかった、FU Ori型星の増光時の原始惑星系円盤の温度・重力変化を捉えることができた。このような変化を今後より詳細に観測し、FU Ori型アウトバースト時の物理的変化と惑星形成の関係性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近傍星形成領域であるおうし座分子雲やへびつかい座分子雲に対し、可視・近赤外の高分散分光観測を実施し、前主系列星の年齢決定を行った。この2領域間で原始惑星系円盤の寿命は異なっており、さらにはそれぞれの領域内においても、前主系列星の場所により円盤寿命が異なることがわかってきている。特にへびつかい座分子雲では、分子雲に深く埋もれ、外的な影響を受けにくい前主系列星ほど原始惑星系円盤の寿命が長いことが示唆された。一方で、FU Ori型星の増光メカニズムや、増光時の原始惑星系円盤の物理的特徴とその変化に関する論文を発表した。この研究はもともとの研究テーマと関連性が高く、原始惑星系円盤の理解を深める上で重要であるが、結果的に従来計画していた研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
すばる望遠鏡で行なった近赤外線分光観測の結果をまとめ、原始惑星系円盤の寿命と外的環境の関連性についての議論を深める。また同時に、可視高分散分光観測のデータと合わせ、原始惑星系円盤の寿命と金属量の相関も明らかにしていく。さらに、連星系を成す若い星の分光観測も進めており、この結果をもとに連星系の成り立ちや星惑星形成の議論をする上で重要である進化モデルの正確性の検証なども併せて取り組む。
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Causes of Carryover |
(理由) 従来の研究計画に含まれていなかった、FU Ori型星の分光モニター観測に関する研究と論文発表を実施したため、もともと計画していた研究に遅れが生じた。 (使用計画) 原始惑星系円盤の寿命と星形成領域の外的環境の相関について、すばる望遠鏡で観測済みのデータをまとめ、論文を出版し、さらに複数の学会・研究会で発表する。余剰金はこれらの論文投稿費用と研究会参加に必要な旅費等に使用する。
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Research Products
(2 results)