2015 Fiscal Year Annual Research Report
自治体PPP導入による効率性・有効性への影響-公営交通事業を対象に-
Project/Area Number |
26870510
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 裕規 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (20612336)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公営交通 / PPP / 管理の受委託 / 契約設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、わが国の地方自治体におい2000年代の初頭より導入が増えているPPP方式に焦点を当て、その契約設計が効率性や有効性といった成果に結びついているかを明らかにするものである。初年度である平成26年度は、第一に、わが国に先行して公共交通事業にPPPを導入している欧州各国の事業者選定方法や契約設計を調査し、効率性や有効性をいかに担保する設計が行われているかについて調査した。第二に、わが国の公営バス事業者へのヒアリング調査と郵送調査により契約設計の現状に関する把握に努めた。最終年度である平成27年度は、事業者の個表データや前年度に収集した情報を用いて管理の受委託方式の導入効果の評価を行い、その成果を論文に取りまとめた。効果としては費用に注目し、確率フロンティア費用関数の推定から費用効率性の計測を行った。確率フロンティア関数は前年度に行ったプーリングデータモデルを拡張し、パネルデータによる推定を行った。本分析結果より管理の受委託は、事業者の費用を押し下げる効果があることが示されたものの、効率性という観点からは導入後に費用効率性値が大幅に改善することはなかった。また、中小事業者と比較して、政令指定都市で運行を行う大規模事業者の効率性値が低いことが示された。このような結果を得た要因の一つとして考えられるのは、事業者の費用効率性が管理の受委託以外の要因により規定されている可能性である。また、本研究を進める中で出てきた新たな研究課題として、PPP方式の評価は金銭的な面だけではなく、情報の非対称性などに起因する取引費用をも含んだ評価の必要性である。今後は、我が国の交通・公益事業におけるPPPの議論においても、取引費用の規模を定量的に計測した上で、効率的な受託事業者の選抜方法や契約設計の議論を行うことが必要となる。
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