2017 Fiscal Year Research-status Report
読みの習熟に伴う、脳内ネットワークの変化に関する研究
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26870516
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (00411372)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発達性ディスレクシア / 機能的MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
発達性ディスレクシアとは、視覚や聴覚といった感覚障害や知的発達障害、学習機会の剥奪がないのも関わらず、読みの習得・利用の障害を示す学習障害の1つである。本研究は発達性ディスレクシアの障害を理解するための、認知神経科学的な視点からの基礎的資料を提供することである。 H29年度は「文字-音韻変換処理」を必要とする語い判断課題(音韻付加型)と、通常の語い判断課題(通常型)とを行い、平仮名の読み過程において音韻処理と意味処理の分離を試みた。通常の語い判断課題では、単語のVisual Word Formを介して、語い判断が可能である。それゆえ、ディスレクシア児で障害があると推定されている音韻過程への負荷が弱く、脳機能画像で描出することは困難と考えられる。そこで文字‐音韻処理を強いる音韻付加型の語い判断課題を導入した。成人を対象とした実験の結果、従来の語い判断課題に比べ、音韻付加型語い判断課題では頭頂間溝の深部に沿った縁上回でより高い活動が認められた。また単語と非語に関わる脳活動を比較した結果、単語では、非語に比べて、角回でより高い活動が認められた。本研究の結果から、文字-音韻変換処理(音韻付加型 > 通常の語彙判断課題)に関わる脳領域は頭頂間溝の深部に沿った縁上回に、音韻を介した意味処理(単語 > 非語)には角回が重要な領域として活動するが明らかとなった。 ここから両者を分離して評価する上で音韻付加型語い判断課題が有用だと考えられた。本研究の成果は第42回 日本神経心理学会にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている要因は大きく2つ、ひとつ目は研究代表者が所属する大学のキャンパス移転を行う年であったため物理的な研究環境と、二つ目は北海道大学小児科にて共同で機能画像研究を行っていた研究者が海外へ異動したため人的な研究環境とが大きく変化したことが挙げられる。そのため研究期間を1年延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
事態が把握できた段階から、すぐに京都大学などとの共同研究を新たに構築している。実施する課題はすでに完成しているため、発達性ディスレクシア児および定型発達児に対する機能的MRIによる測定を行っている。
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Causes of Carryover |
研究環境の変化により、1年間の研究期間の延長を行ったため、次年度使用額が生じている。新たに構築した研究体制において、必要な機器・経費および研究相談に関わる移動(旅費)に研究費を適切に使用する。
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Research Products
(1 results)