2016 Fiscal Year Research-status Report
植民地台湾監獄法制の展開に関する実証的研究―植民地支配体制の基盤形成をめぐって―
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26870520
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
姫嶋 瑞穂 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (60709252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 監獄 / 台湾監獄則 / 台湾監獄令 / 浮浪者取締制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「日本型行刑」・監獄法制の運用実態の分析による刑事政策的側面から植民地支配体制の基盤形成における特質を解明することにある。 当該年度においては、日本本国と台湾社会・台湾民衆との相互関連性のなかで台湾統治政策における監獄の位置づけを明確にすることを主眼とした。日本本国と植民地間を架橋する監獄制度・刑事政策関連諸法の重層的な構造を解明することによって植民地支配体制の基盤形成を跡付けることが課題となった。多元的な犯罪処罰体系が、植民地台湾監獄制度にどのような影響をもたらしたのか、また、受刑者の管理と保護に焦点をあて、検討を行った。特に、台湾総督府は1903年から1909年の間に、台湾独自の犯罪抑制体系を完成させ、特別法を制定しており、この特別法の意義について検証するとともに、浮浪者取締制度に着目し、浮浪者収容所の制度的沿革ならびに特殊性について考察した。 また、日本統治期の台湾監獄組織の確立についても検討が必要であると考え、台湾の中央と地方の監獄機関の設置に関する沿革について概観した。他方で、受刑者処遇の実態を明らかにするためには、監獄官吏がどのように養成されたのかを知ることが重要となる。台湾における監獄官吏の多くが、「台湾総督府警察官および司獄官練習所」で要請されていたことに注目し、どのような教育・訓練を受けていたのか、その実情に迫ったうえで、日本本国における「司獄官練習所」における教育との差異について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度をもって研究を完結し、論文を公表予定であったが、卵巣腫瘍が発覚し、入院・手術を余儀なくされたこと、さらに、予後の経過が悪く、安静・休養が必要であると医師から診断がなされたため、研究を中断せざるをえない状況となった。現在は研究を再開しているものの、入院・加療中の研究の遅れは相当なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で断念した論文の公表に注力する。論点は、①台湾における日本内地法の具体的継受の過程や日本本国との統合政策の相関関係・連関性を明らかにするだけではなく、民族問題や異法域を課題とする官と民での異なる政策構想ならびに対応を明確にすること、②日本本国と台湾社会・台湾民衆との相互関連性のなかで台湾統治政策における監獄の位置づけを明確にする。日本本国と植民地間を架橋する監獄制度・刑事政策関連諸法の重層的な構造を解明することによって植民地支配体制の基盤形成を跡付けることである。
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Causes of Carryover |
卵巣腫瘍による入院・加療のため、台湾への調査を断念せざるをえなかったことが影響したことから、次年度に繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
台湾への文献調査・収集に使用する予定である。
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