2014 Fiscal Year Research-status Report
ワイヤレスセンサーネットワーク(WSNs)による分散型服薬モニタリングシステム
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26870528
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
星 憲司 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (20405913)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 服薬アドヒアランス / Bluetooth Low Energy / 医療用デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、在宅で服薬治療中の患者の服薬アドヒアランスを改善するために、遠隔地にいる患者の服薬イベントを長期間にわたって24時間体制でモニタリングすることができる、服薬モニタリングシステムを構築し、実際の環境で運用・評価することを目的としている。この目的を達成するため、開封センサと無線モジュールを備えた医薬品パッケージを開発する必要がある。被験者が処方薬を自由に携帯できるように、システムがネットワークから切り離された環境でも自律的に動作できるようにする。また、小型のシステムを長時間動作させるために、実環境における通信パラメータの最適化が必要である。
平成26年度は、服薬モニタリングシステムのハードウェアとソフトウェアの開発を行った。ハードウェア面では、医薬品パッケージの開封センサの作成手法を改良し、インクジェットプリンタで印刷可能なナノ粒子インクを利用する手法を開発して、安定したセンシングができることを確認した。通信モジュールとして、システムの小型化と長期間の動作の両立を実現するために、通信規格 Bluetooth Low Energy(BLE) に準拠したデバイスを選定し、実験的に少数実装し、実環境で利用できることを確認した。 ソフトウェア面では、被験者の自宅側で BLE による通信を中継するパーソナルサーバのソフトウェアを設計・開発した。また、病院側で服薬イベントを記録し、服薬ミスを検出したときに、治療担当者と患者にアラームで通知するサーバのソフトウェアを設計・開発した。
本年度開発したハードウェアとソフトウェアを、次年度に実施予定である、医療機関におけるシステムの実証実験の基盤として利用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書の研究実施計画では、平成26年度に分散型服薬モニタリングシステムのハードウェアとソフトウェアの開発を行うとした。この計画に従って、(1)開封センサ(ハードウェア), (2)通信モジュール(ハードウェア), (3)パーソナルサーバ(ソフトウェア), (4)病院側サーバ(ソフトウェア) の開発を実施した。
上記に加え、平成27年度に実施予定の実証実験について医療機関と協議を行い、実験を円滑に進める目的で、研究実施計画には記述がなかった次の追加項目を実施した。 (A): システムの小型化と信頼性の向上をはかるため、導電性ペーストのシルクスクリーン印刷による手法に変えて、ナノ粒子インクを利用する手法を新しく開発した。(B): 近年の Bluetooth Low Energy(BLE) に対応した通信機器の普及を考慮して、通信規格として同規格を採用し、同規格に準拠した通信機能を持つスマートフォン等を、通信を中継するパーソナルサーバとして利用することにした。
これらの追加項目を実施したことで、次年度の実証実験を効果的に進められることが期待できるが、(B) で通信規格を変更した影響でソフトウェアの開発工程が増加した。そのため、26年度内にハードウェア、ソフトウェアの開発と動作検証が完了せず、研究計画に若干の遅れが発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成26年度に未完となっていたハードウェア、ソフトウェアの開発と動作検証を完了させる。次いで交付申請書の研究実施計画に従って、実環境における通信パラメータの最適化を実施する。
これらが終了した段階で、医療機関において、被験者の長期間の服薬イベントを記録する実証実験を実施する。研究実施計画では高血圧症と脂質異常症の患者を対象としていたが、医療機関との協議の結果、治療が一定期間で完了し、患者の平均年齢が低いという点で実験上のメリットがある、潜在性結核感染症患者を対象とした実験に変更する。実施期間は、1被験者あたり6か月間程度とする。
実験終了後に、病院側サーバに残った服薬記録結果と残薬数を解析し、記録の精度を検証する。また、被験者と実験に参加した医師・薬剤師を対象にアンケートを実施し、開発したシステムの課題を抽出する。以上で得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
システムの通信規格を変更した影響でソフトウェアの開発工程が増加した。その影響で、一部のハードウェア(通信モジュール)とソフトウェア(医療機関側サーバ)の開発を次年度に行うこととしたため、当該ソフトウェアの開発費用が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究実施計画に従って、26年度に開発が完了しなかった、通信モジュールと医療機関側サーバの開発費用として使用する。
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