2014 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞インクレチンホルモン依存性Trpm2チャネル制御機構解明に関する研究
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26870532
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
吉田 昌史 自治医科大学, 医学部, 助教 (50528411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Trpm2チャネル / GLP-1 / インクレチン / EPAC / GPR40 / アドレナリン / インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、膵β細胞新規インスリン分泌経路解明を目的に立案した。平成26年度は①~④の実験を実施した。①Rap1インヒビターのGLP-1作用に及ぼす影響の検討。②Trpm2電流にグルコース代謝が影響を及ぼすかどうかの検討。③アドレナリンが背景電流に影響を及ぼすかどうかの検討。④GPR40刺激が膵β細胞背景電流に影響を及ぼすかどうかの検討。①の結果;Rap1インヒビター(GGTI298)はEPAC刺激によるTrpm2電流の増加を打ち消した。本結果より、GLP-1は、EPAC及びRap1を介してTrpm2電流を増加させ、インスリン分泌を増強する事が明らかとなった。②の結果;細胞外ブドウ糖濃度上昇で有意な背景電流の増加を観察した。この変化は浸透圧調節にて再現できず、電子伝達系インヒビターにて消失し、Trpm2ブロッカーにて消失し、Trpm2 KOマウスでも観察されなかった。同様の電流増加がEPACエンハンサー投与でも観察され、EPACインヒビターにて消失した。以上より、Trpm2がEPACを介して糖代謝依存性に開口し、KATPと協働して膜電位・インスリン分泌を制御していることが明らかとなった。③の結果;パッチクランプ法を用い、背景電流に対するアドレナリンの影響を観察した。アドレナリンはcAMP-EPAC抑制を介して、背景電流増加を抑制し、インスリン分泌を抑制した。④の結果;パッチクランプ法を用い、GPR40作動薬の背景電流に及ぼす影響を観察した。GPR40シグナルはTrpm2以外の背景電流を増加させ、インスリン分泌を増強することが明らかとなった。以上の結果より、我々はEPAC-Rap1-Trpm2経路という新たなインスリン分泌機構を解明したと同時に、これまで機序不明だがインスリン分泌に影響を及ぼす事が知られていた物質(アドレナリン、GPR40)の作用機序の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画した実験計画はほぼ全て実施することができた。得られた結果も意義のあるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果より、我々は新規グルコース・インクレチン刺激インスリン分泌機構を明らかにし、膵β細胞に存在する背景電流の重要性を証明した。また、GPR40刺激及びアドレナリンは背景電流に影響し、インスリン分泌を増減させることが明らかとなった。平成27年度は、その結果を基に、①GPR40シグナルの詳細な解明。②アドレナリンのインスリン分泌抑制機序のシグナル解明。③その他の物質(作用機序不明だが、インスリン分泌に影響を及ぼす事が知られている物質)の作用機序解明を実施する予定である。パッチクランプ法、インスリン分泌測定、膵島還流実験、カルシウム測定を適宜実施する。Trpm2 KOマウス、SUR KOマウスを適宜用い、電気生理学的あるいは分子生物学的に、多分子間情報伝達経路の解明を目指す。①~③が十分解明された場合、適宜糖尿病モデル動物から得られた膵β細胞を用い、それぞれの刺激に対する正常動物との反応性の違いや電流密度の差の比較検討を行う。これらの実験で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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[Journal Article] Involvement of cAMP/EPAC/TRPM2 Activation in Glucose and Incretin-Induced Insulin Secretion2014
Author(s)
Masashi Yosida, Katsuya Dezaki, Kunitoshi Uchida, Shiho Kodera, Nien V. Lam, Kiyonori Ito, Rauza S. Rita, Hodaka Yamada, Kenju Shimomura, San-e Ishikawa, Hitoshi Sugawara, Masanobu Kawakami, Makoto Tominaga, Toshihiko Yada, and Masafumi Kakei
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Journal Title
Diabetes
Volume: 63
Pages: 3394-3403
DOI
Peer Reviewed
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