2016 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本の医療システム―地域社会における医療供給主体と医療費支払主体―
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26870534
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Research Institution | Jobu University |
Principal Investigator |
中村 一成 上武大学, 商学部, 講師 (30634042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療史 / 社会経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「近現代日本における医療の供給および受療の経済的実態を,可能な限り構造的に明らかにすることである」が,今年度は医療の受療の側面を解明することに注力した。昨年度分析に着手した医療需要側の医療費支払い様式にアプローチできる北海道の漁業経営資本が残した経営史料について,追加の史料収集および分析の面で大きな進展があった。 史料収集については,漁夫名簿および雇用契約書に当たる「差入証」,漁夫募集に係る史料群に加えて,漁夫の所在および移動実態を解明するための漁場台帳や,漁夫ごとに報酬および経費の控除を記録した「漁夫勘定仕訳帳」をまとめて収集した。(漁夫の所在および移動実態は,漁場近辺の医療機関との対応関係を確認するために必須であった。)これらを分析することによって,漁業経営における漁夫雇用の構造を解明することを通じて,医療サービスの提供様式が判明することが期待できる。 史料のボリュームが膨大なため,未だその一部の分析が進展したに過ぎないが,今年度の研究成果として,漁業経営における漁夫雇用に係る報酬支払いシステムの中に医療サービスの消費が埋め込まれていることに加え,医療費未収リスクを雇用主が負う構造があることによって,医療費掛け払いが成立していたことを解明した。この成果については学会発表を準備している。 またすでに分析作業を終えている史料に関して,19世紀末から20世紀前半にかけての農山村における病院医療供給様式についての論文が学会誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に分析を終えている史料については論文執筆作業が進行していること,昨年度新たに分析に着手した史料については学会発表の準備が進んでいること,加えて周辺の文献および史料の収集も進んでいることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度になるので,これまでの分析を一望する研究のまとめを行うとともに,そこから新たな研究課題を展望するべく,周辺史料および文献の収集を継続する。
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Causes of Carryover |
前年度からの繰り越し分があったことに加え,今年度も「旅費」および「その他」の費用を用いた史料調査を効率的に実施できたことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も費用の効率的な使用を心がけることは当然であるが,研究のまとめを行う年度でもあり,早期に使用を行いまとめ作業をする時間を確保する。
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