2017 Fiscal Year Annual Research Report
Medical System in Modern Japan : Suppliers and Payers of Medical Care in the Community
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26870534
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Research Institution | Jobu University |
Principal Investigator |
中村 一成 上武大学, 商学部, 講師 (30634042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会経済史 / 医療史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「近現代日本における医療の供給および受療の経済的実態を,可能な限り構造的に明らかにすることである」が,今年度は昨年度に分析が進展した医療需要側の医療費支払い様式にアプローチできる北海道の漁業経営資本が残した経営史料について,現時点での総括をして学会発表を行った。 そこでは,近代日本における医療費支払い様式が主に現金払いでなく「薬価掛け払い」であったことに注目し,流動的な出稼ぎ漁夫の就労地における医療受療を保障する仕組みとしての,雇い主による薬価立替払いの事例を検討した。その結果,個々の漁夫に対する薬価掛払いに伴う医療供給側の未収リスクに対して,雇い主による信用供与が機能していたことを明らかにした。 また,別途分析を進めていた医療需要と医療供給を「一体化」させようと試みる戦後岩手県地域の事例について,論文発表を行った。そこでは,「医療と保険の一体化」あるいは「医療と保健の一体化」を目指して活発な活動を行った,岩手県における戦前医療利用組合運動や戦後国民健康保険普及運動の役割を描くとともに,その限界をも明らかにした。 加えて,前科研費研究から本研究に連なる一連の研究の現時点における総括を博士論文という形でまとめ,これを提出した。そこでは,明治期から高度成長期における近現代日本の地域と医療の社会経済史の見取り図を,それぞれの時期の特徴を典型的に表すと考えられる地域に即して描いた。
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