2014 Fiscal Year Research-status Report
指示タイミングを利用した非言語情報の統合的利用と指示意図推測の検討
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26870549
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
安田 哲也 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 有期助手 (90727413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 他者意図理解 / 部分名称獲得 / 教示行動 / 視線タイミング |
Outline of Annual Research Achievements |
ラベリング時、幼児は教示者が与えた発話のみでは、発話の意味を推測することは困難である。言語情報の他に教示者が発する非言語情報を適切にくみ取り、教示者が与える言語情報を推定しなくてはならない。平成26年度では、幼児がどのように言語情報と非言語情報とを統合的利用し意味推定を行なうかについて、視線タイミングに関する心理学実験を用い検討した。また、実際の観察データから、どのように発話内容を提示しているかについて、成人の教示行動を調べた。 部分名称獲得場面を用いた視線タイミングに関する心理学実験に関し、視線方向の感受性の違いを調べるために、3歳児に対してJCSS2013の手法を利用し実験を行なった。その結果、教示時に相互視を行なった場合、2歳児は特別な意味を視線方向から見出す可能性が示唆された。この結果は、2歳児では事物を見ながら接触指さししてもその意味を捉えることが難しいというKobayashi(2007)の結果と異なり、新奇性が高く興味深い現象だと考えることができる。28年度以降は、論文化するために参加者の数を増やすこと等を考えている。 成人の教示行動については、平成26年度では成人同士のインタラクションにおける教示行動を分析した。なお、教示者が与える名称は、意味が伝達しにくい無意味語を利用した。その結果、教示者は、非教示者に意味を伝えるために、発話フレーズの中でも教えている最中に指示行為を変えることが示唆された。28年度以降は、この指示動作の提示タイミングの変化が対乳幼児動作でも生起するか、母子インタラクションのビデオデータを詳細に調べることで明らかにする。なお、これらの知見は、査読付きの国際会議のJSLS 2014 とRo-Man 2014でフルペーパーの口頭発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画書に沿って、平成26年度の研究を遂行した。 研究1の視線タイミングに関する実験については、部分名称獲得の研究を査読付きの国際会議であるThe 16th Annual International Conference of the Japanese Society for Language Sciences で発表を行った。発表した実験内容は、接触指さしを行った瞬間、相互視を行うと2歳児は接触指さしに意味を見出す可能性を示唆したというものであった。 研究2の教示行為に関する観察実験については、母子のビデオデータを分析したところ、事物名称を教える際に、特殊的な教え方をしていたことが示唆された。この特殊的な教え方を対乳幼児動作(IDA)であると仮定し、成人同士の相互作用時でも同様に生起されるかを調べたところ、対乳幼児動作に似たような動作をしていることが示唆された。この教示行為を心理モデル化し、IEEEが主催する査読付きの国際会議The 23rd IEEE International Symposium on Robot and Human Interactive Communicationで発表を行なった。 以上のことから、本申請の研究はおおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究推進は、提出した研究実施計画書に沿って行う。 研究1においては、平成27年度で得られた知見を精緻するために、参加者を増やすことや、事物に対しての指さし方向を変える等の条件を調べ、どのように視線タイミングが関わっているかを調べる。 研究2においては、蓄積されたビデオデータを使い、Frame-by-Frame法を用いてビデオ分析を行なう。なお、適切なコーディングがなされたかを他の研究者と議論を行い確認し、ダブルコーディングを行なうためにデータ解析補助を学生に依頼する。 以上の研究は、様々な国際会議で議論を行い、論文化を行なうために精緻化することを考えている。
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Causes of Carryover |
研究2の予備データ解析の結果から、分析を探索的に行う必要があり、今年度においてダブルコーディングの必要性は少なかった。そのため、分析補助であるダブルコーディングに関する費用は使用しなかった。このことにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究2のデータ分析において、国際会議等で他の研究者と議論を行なった結果、適切な分析方法が示唆された。次年度では、論文化に向けてのダブルコーディングに関する費用として使用することを計画している。この使用により、なお一層の研究推進が図られることが期待される。
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