2015 Fiscal Year Annual Research Report
H. pyloriの原生動物を介した環境への分布に関する研究
Project/Area Number |
26870567
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
北条 史 杏林大学, 医学部, 助教 (40580569)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 共生 / Helicobacter pylori / 原生動物 / 環境 / 感染経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではHelicobacter pyloriが原生動物を利用して環境中に分布している可能性を検討した。先行研究及び前年度の研究成果により、本菌が原生動物との共培養系において自身の生存性を向上させることが培養法によって明らかになった。また、この培養系においてメンブレンフィルターや蛋白質吸着フィルターを用いて本菌と原生動物の接触を阻害すると生存性の向上は制限されることも明らかになった。更にH. pylori単独培養系と共培養系においては本菌のmRNA発現に差が見られた。最終年度においてはmRNA発現をBagglaleyの方法により統計解析したところ、単独培養系内のH. pyloriは共培養系と比較して157の遺伝子に発現増強を認めた。一方で共培養系内のH. pyloriは単独培養系と比較して286の遺伝子に発現増強を認めた。これらの遺伝子の機能的な解析を行ったところ、共培養系においては「翻訳・リボソーム構造および生合成」に関わる遺伝子が34遺伝子と最も多く発現増強し、次いで「エネルギーの産生と変換」に関わる遺伝子が多く発現増強していた。またH. pylori単独培養系と共培養系内の本菌の形態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、単独培養系においてはほとんどの菌体が球状菌化した一方で共培養系においては正常な螺旋状の菌体が確認された。本菌の球状菌化は生きているが培養できない状態(viable but non-culturable:VBNC)で、生育環境要因の悪化に伴い誘導されるサバイバルフォームであると考えられている。従って共培養と比べて単独培養で球状菌が多く見られたことは本菌が生存にとって不利な条件下におかれていることを示すと考えられた。 これらの結果より、in vitroの実験において、H. pyloriが原生動物を利用して生存性を向上させていることが明らかになった。
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