2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトがん細胞におけるthymidine異化代謝の役割
Project/Area Number |
26870576
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田畑 祥 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任助教 (30708342)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | thymidine |
Outline of Annual Research Achievements |
Thymidine phosphorylase (TP) は、広範な腫瘍で高発現しており、血管新生、増殖、浸潤、および抗がん剤耐性に重要な役割を担っている。しかしながら、TPがどのような分子メカニズムでがんの進展に貢献するのか、その詳細は明らかになっていない。今回の検討で、次のことが明らかになった。 1.ヒト類表皮がん細胞(KB3-1)にTP遺伝子を導入したTP安定発現細胞(KB/TP)をラベル化thymidine(deoxyribose部位に炭素の同位体13Cを有するthymidine)で処理して、詳細なthymidineの異化代謝経路について調べた。継時的な代謝変化について調べた結果、thymidine由来のdeoxyribose類(DDRs)は解糖系およびペントースリン酸経路に短時間(10-30分)で移行していることが判明した。また、fructose-1,6-bisphosphatase 1(FBP1: 糖新生の律速酵素)をsiRNAでノックダウンした結果、DDRsからのペントースリン酸経路への異化代謝が阻害された。DDRsは糖新生経路を介してペントースリン酸経路に移行することが明らかとなった。 2.TPおよびthymidineがエネルギー代謝関連遺伝子(解糖系、ペントースリン酸経路およびTCA回路の代謝酵素)の発現に影響を与えるか、PCRアレイを用いて検討を行った。その結果、TPはpyruvate dehydrogenase kinase 4 (PDK4)の発現を亢進し、さらにthymidineはその作用を増強させた。PDKはpyruvate dehydrogenaseを阻害することで、解糖系からクエン酸回路への代謝を抑制する。TPはPDK4の発現を亢進し、クエン酸回路の代謝を抑制することが示唆された。 3.2-deoxy-L-ribose (DLR)がDDRsの代謝を阻害するのか、検討を行った。その結果、(thymidine由来の)DDRsの異化代謝経路に対して、DLRは影響を与えなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画分については、当初の予定通り遂行できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 胃癌組織ではTPの発現が亢進しており、予後との相関が認められている。そこで、胃癌組織および隣接した非癌組織におけるthymidineおよびDDRsレベルについて調べる。次に、TPの発現およびDDRsレベルが、解糖系およびペントースリン酸経路の代謝物質レベルと相関するか検討する。また、このthymidine異化代謝が腫瘍の血管数、腫瘍の大きさ、転移および予後に関与するか明らかにする。 2. TP発現がん細胞において、thymidineがglucoseの代替的エネルギー源として細胞の生存および増殖に貢献するのか検討する。低glucose培地でTP発現がん細胞を培養し、thymidineを添加することで生存および増殖が変化するか調べる。さらに、ATPおよびNADPHレベルの変化についても調べる。 3. これまでの報告で、TP発現がん細胞からDDRが放出され、それが血管内皮細胞に作用することで遊走性が亢進し、血管新生を引き起こすことが示唆されている。しかしながら、その分子機構は不明な点が多い。我々は、DDRが(がん細胞と同様に)血管内皮細胞の代謝に影響を与えることで、生理活性を示しているのではないかと考えている。がん細胞から放出されたDDRが血管内皮細胞内に移行し、エネルギー代謝(解糖系、ペントースリン酸経路)に貢献することで、遊走能を亢進させる可能性がある。そこで、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をラベル化DDRで処理して、解糖系およびペントースリン酸経路の代謝物質レベルについてCE-MSで調べる。ATPおよびNADPHレベルの変化についても検討する。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Ribonucleotide reductase is an effective target to overcome gemcitabine resistance in gemcitabine-resistant pancreatic cancer cells with dual resistant factors.2015
Author(s)
Minami K, Shinsato Y, Yamamoto M, Takahashi H, Zhang S, Nishizawa Y, Tabata S, Ikeda R, Kawahara K, Tsujikawa K, Chijiiwa K, Yamada K, Akiyama S, Torras SP, Anglada MP, Furukawa T, Takeda Y.
-
Journal Title
J Pharmacol Sci.
Volume: 127
Pages: 319-325
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] Expression of ABCB6 is related to resistance to 5-FU, SN-38 and vincristine.2014
Author(s)
Minami K, Kamijo Y, Nishizawa Y, Tabata S, Horikuchi F, Yamamoto M, Kawahara K, Shinsato Y, Tachiwada T, Chen ZS, Tsujikawa K, Nakagawa M, Seki N, Akiyama S, Arima K, Takeda Y, Furukawa T.
-
Journal Title
Anticancer Res.
Volume: 34
Pages: 4767-4773
Peer Reviewed