2015 Fiscal Year Research-status Report
スペックルフリーInGaN系ナノコラムフォトニック結晶レーザー
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26870581
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石沢 峻介 上智大学, 理工学部, 研究員 (80587767)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノコラム / ナノワイヤ / 窒化物半導体 / 半導体レーザー / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度,光励起においてレーザー発振を確認できたInGaN系ナノコラムを電流注入デバイスへと発展させるため,サンプルの試作と評価を行った。デバイス結晶の構造は,連続膜のAlGaN/GaN分布ブラッグ反射鏡(DBR)上にn型GaN・InGaN/GaN MQW活性層・p型層からなるナノコラム構造を,Tiマスク選択成長法を適用した分子線エピタキシー法で作製した構造で,ナノコラム上部のp型層およびエッチングによって露出させたナノコラム下部のn型膜結晶上にITO透明電極を成膜することで電流注入デバイスを完成させた。電流電圧特性は立ち上がり電圧6V程度の整流性を示し,緑色の発光が得られた。パルス電圧源を用いることで25V以上の電圧を印加し,直径30μmの電流注入領域に100mA以上の電流を流すことができたが,レーザー発振は確認できず,結晶成長条件や電極プロセスなどに課題があることが分かった。 スペックルフリー光源を実現するための新たなアプローチとして,単一のデバイスから広帯域レーザー光を得る手法を検討した。これまでは均一な構造(周期・直径)のナノコラムアレイを利用して単一の波長でレーザー発振を得ていたが,構造に変化を加えることで多波長のマルチモード発振が可能になると考えられる。本研究で用いたのはAlGaN/GaN DBR上にInGaN MQW活性層を含むGaNナノコラムアレイが成長したサンプルで,Nd:YAGレーザーを用いた光励起測定における直径20μmの励起領域下にて,周期250nmの三角格子状に配列したナノコラムの直径が151~190nmの範囲で変化した構造を測定対象とした。励起パワー密度0.43MW/cm2以上のとき,491~525nmの波長範囲において11ピーク以上の多数の鋭いスペクトルから構成される広帯域マルチモード発振が得られた。この原理に基づいたレーザー光源をディスプレイに応用した場合,スペックルノイズの指標であるスペックルコントラストは5%以下に抑えられると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電流注入デバイスの試作によって発光ダイオードとしての動作が確認され,電流注入発振の実現に向けた課題が見いだされた。そのいくつかについて対策が取られた。たとえばITO透明電極とプローブを当てるための金属電極の間の接触に問題があり,特性がばらつく原因となっていることが分かったため,工程を見直し,これを改善した。また,p型層については,p-AlGaN電子ブロック層,p-GaN層,p-InGaNコンタクト層という3層の構造を用いているが,各層に大きな問題が生じていないことまで確認され,今後成長条件を最適化することで特性の改善が見込まれる。 デバイスの評価において特に顕在化した課題として発光がマルチピークである点が挙げられる。これを解決するために,活性層として用いるInGaNをGaNナノコラム上に厚く成長したInGaNバルクナノコラムを評価することで検討した結果,その原因のひとつとしてナノコラム内部のInGaN層においてIn組成の分布が発生していることが明らかになった。この実験の中で,InGaNをなるべく高温で成長するなどの工夫によってナノコラムの中心にIn組成の高いInGaNを凝集できることが判明した。これを量子井戸に応用することによって均質な発光特性を持つ活性層が得られ,レーザー発振の実現が可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
デバイス試作によって明らかになった課題は,おおよそ解決のための見通しが立っている。残る課題となっているInGaN活性層の最適化を早急に進め,再びデバイス試作に立ち戻り,さらなる課題の抽出とその解決を通じて電流注入発振デバイスを実現したい。 多波長集積デバイスを実証するためのデバイス設計も行っており,新たなフォトマスクを入手したため,今後これを用いて実際にデバイスの作製を行っていきたい。ワイヤボンディングによるチップ素子化によって低温環境下における測定が可能になるため,パルス電流注入などとあわせて測定を行い,発振動作を実証したい。 また,今回新たに提案されたナノコラム配列の工夫によって広帯域化を狙う手法についてもデバイス応用にむけた試作に着手したい。
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