2014 Fiscal Year Research-status Report
神経膠腫による言語機能障害発症メカニズムの解明:脳機能イメージング法による研究
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26870582
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
金野 竜太 昭和大学, 医学部, 講師 (70439397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 脳内ネットワーク / 機能連関 / functional MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究により、左下前頭回や左運動前野外側部の神経膠腫患者において、文の統語処理障害が生じることが報告された。近年、統語処理には大脳の左右半球と小脳を含めて14の脳領域が関与し、これらの脳領域が3つの神経回路を形成するということが明らかとなった。平成26年度は、統語処理に関与する脳内ネットワークの機能連関が、神経膠腫患者においてどのように変化するのか調べた。 実験では、左前頭葉の神経膠腫患者21名と健常者対照群7名を対象に、機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)を用いて統語処理時の脳活動を計測した。先行研究で示された14領域を関心領域として、脳活動の時系列データの偏相関解析をすべての関心領域間において行った。その結果、健常者対照群では、14領域の機能連関が、3つのグループにはっきりと分離していることが示された。一方、左下前頭回や左運動前野外側部の神経膠腫患者群では、統語処理に関与する脳内ネットワークの機能連関が乱れていることが明らかとなった。さらに、その他の左前頭葉の神経膠腫患者群においても、統語処理障害がないにもかかわらず、脳内ネットワークの機能連関が乱れていることが明らかとなった。しかし、この患者群では、左下前頭回弁外部/三角部―左下頭頂溝、左運動前野外側部―左角回、左下前頭回眼窩部―左下前頭回三角部、の3つの機能連関が健常者と同様に保たれていることが明らかとなった。以上の結果より、神経膠腫の存在は腫瘍存在部位によらず統語処理に関与する脳内ネットワークの機能連関に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに、統語処理において左下前頭回弁外部/三角部―左下頭頂溝、左運動前野外側部―左角回、左下前頭回眼窩部―左下前頭回三角部の機能連関が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は神経膠腫による言語機能障害発症メカニズムを解明することである。平成26年度の実験で得られた知見より、神経膠腫の存在は脳内ネットワークの機能連関に影響を及ぼすことが明らかとなった。しかしながら、明らかな言語障害を呈さない患者群では、左下前頭回弁外部/三角部―左下頭頂溝、左運動前野外側部―左角回、左下前頭回眼窩部―左下前頭回三角部、の3つの機能連関が健常者と同様に保たれていることも明らかとなった。以上の結果より、神経膠腫による言語機能障害発症メカニズムにおいて、左下前頭回弁外部/三角部―左下頭頂溝、左運動前野外側部―左角回、左下前頭回眼窩部―左下前頭回三角部の機能連関の変化が重要であることが初めて明らかとなった。 神経膠腫による言語機能障害発症メカニズムにおいて、脳内ネットワークの機能連関の変化が重要な要因であることが明らかとなり、当初の予定通りに本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果により、神経膠腫による言語障害は局所の脳機能障害が原因ではなく、脳内ネットワーク内の機能連関の変化によることが明らかとなった。今後の研究のの推進方策として、この知見を補完することが重要である。具体的には、神経膠腫の悪性度の違いや病理組織の違いが、機能連関の変化にどのように影響するのか明らかにすることが必要である。そのために、グレード別や病理組織別に脳内ネットワークの機能連関を調べて比較検討する方針である。また、神経膠腫以外の疾患により脳内ネットワークがどのように変化するのか、そして、その変化が言語機能とどのようなかかわりがあるのか多方面の解析を行う方針である。これらの検討を統合して、「神経膠腫による言語障害が脳内ネットワークの機能連関の変化による」という命題を検証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に得られた研究成果の論文発表準備中であり、英文校閲費やオープンアクセスにする際の費用を平成27年度以降に使用する予定となった。また、平成26年度に得られた知見を検証する目的で、神経膠腫患者を対象としたMRI実験などの追加や、他疾患により言語障害をきたした症例の症例報告を行う方針となり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
神経膠腫患者のfMRI実験のための研究費として、PCなどのデータ解析機購入、数理計算ソフト購入、統計処理ソフト購入、DVD-RやHHDなどの記録メディア購入、実験参加に対する謝金に使用する。神経膠腫以外の神経疾患による言語障害を含めた症例報告にかかる費用として、患者の状態を撮影・記録する媒体(ビデオカメラなど)の購入費、標準失語症検査などの神経心理学的検査用具の購入費に使用する。得られた研究成果の報告のための研究費として、国内外の学会での発表にかかる交通費、宿泊費、日当、発表用媒体(PCなど)購入に使用する。患者データの情報管理のため、患者データ解析PCはインターネットへの接続が困難であり、発表用・論文投稿用PCと分ける必要がある。論文執筆のための研究費として、図表作成ソフト購入印刷費、複写費、英文校正費、投稿費、などに使用する。また、参考資料としての図書費を使用する。
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Research Products
(3 results)