2014 Fiscal Year Research-status Report
ケータイ・メールの代替手段としてのインスタントメッセンジャーがもたらす効果と応用
Project/Area Number |
26870589
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
森本 祥一 専修大学, 経営学部, 准教授 (00433186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | LINE / 非言語コミュニケーション / 対面コミュニケーション / コミュニケーション能力 / メディアリッチネス / ジェスチャー論 / 関係性理論 / 返報性の法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ケータイメールに代わる新たなコミュニケーションツールとなっているインスタントメッセンジャーが与える種々の影響について明らかにし,悪影響を改善,好影響を協調作業や学習に応用可能かどうかを検討することである.
今年度は,国内外で急速に普及し,いまやインスタントメッセンジャーの代名詞ともなっているLINEを対象に,スタンプ機能,吹き出し表示機能,既読表示の3つの機能が,人間の意思疎通,相互理解,合意形成,対人関係にどのような影響を与えているかを,ジェスチャー論,関連性理論,心理学的側面から考察した.スタンプ機能は,会話において表情やジェスチャーの役割を果たしており,文脈からその意味や役割を推論し,解釈する能力が求められることが分かった.既読表示は,返報性の法則によるストレスの原因や,「つながり依存」という問題が起こり得ることが分かった.吹き出し表示は,米国の新聞におけるコミック・ストリップを源流とした吹き出し表示=会話・発言というイメージを利用し,相手と話している,対面のコミュニケーションを連想させていることが分かった.
以上のように,LINEは,言語・非言語によるコミュニケーションが行われていること,タイムリーに相互理解を図ることができること,その場でフィードバックを行うことができることなど,対面で可能とされている要素を持っている,つまり,メディアリッチネスが高い,対面に非常に近いコミュニケーションツールであると言える.文字とスタンプを併用するため,相互理解や相互に自己表現すること,他者理解,合意形成がなされていると言える.更に,スタンプのみでの会話も可能であり,相手が伝えたい思いを推論により汲み取り,スタンプによって自己表現をする,といった高度な合意形成がなされていることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度のタスクとしては,インスタントメッセンジャーによる影響の定性的調査と定量的調査の2件があった.定性的調査については,研究実績の概要に詳しく述べたような結果が得られた.一方,定量的調査の方は,研究を進めていくうちに,大々的な質問紙調査を実施する前に,理論的側面を明らかにしておく必要があることが分かったため,次年度へ持ち越すこととした.その代わりに,次年度に実施予定であった比較実験を繰り上げて行い,定性的調査で明らかになった事実の検証を行うことができた.そのため,達成度に関しては,当初の計画通りの進捗である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度の調査で明らかになったインスタントメッセンジャーが与える影響を踏まえ,グループワークなどの協調学習やブレーンストーミングなどの発想支援の成果を高めるための応用について,その方法や手順(プロセス)を検討する.また,ペンディングとなっている質問紙調査についても実施する.
インスタントメッセンジャーを使ったグループワークにおいて,どのような行動や判断を経て最終的に合意形成がなされるのか,というプロセスを調査する.この調査に,質問紙調査を実施する.そのプロセスにおいて用いられているインスタントメッセンジャーの機能と,グループで行われている活動について,各段階でまとめ,プロセスモデルを定義する.
得られた成果について論文を執筆し,社会情報学会の論文誌に投稿する予定である.
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Research Products
(6 results)