2014 Fiscal Year Research-status Report
大学英語でのCLIL実態調査:多言語主義(マクロ)と談話分析(ミクロ)の視点から
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26870599
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
土屋 慶子 東海大学, 外国語教育センター, 准教授 (20631823)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(スペイン) |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は主に、日本とスペインのCLIL実践と言語政策に関する調査を実施した。前半にCLIL理論・実践、その背景となる言語政策に関する国内外の文献調査、後半にスペインでのCLIL実践の視察、会話資料の分析及びアンケート調査を行った。東海大学にてCLILを取り入れた講義も実践し、国内外の複数の学会、学術誌にて分析結果の一部を発表した。 マクロ的な分析(多言語主義と言語政策)としては、日本・スペインの言語政策について文献調査を進め、その一部を論文として発表した。またマドリッド・コンプルテンセ大学を訪れ、大学及び高等学校での英語によるCLIL授業視察、及び学部生を対象にCLILに関するアンケート調査を実施した(2015年3月)。日本の大学でCLILによる授業を受講した学部生に対しても、アンケート調査を行い、その結果の一部を環太平洋応用言語学会 (2014年8月)にて発表した。また日本、スペインの大学でCLILを実践している教員を対象に、インタビュー調査を実施した。相互交流として、コンプルテンセ大学より、研究協力者であるマリア・ムリーリョ氏を招聘し、東海大学にて特別講義を開催した(2014年6月)。 ミクロ的な分析(学習者間の談話分析)では、CLIL実践の場での学習者間会話を録音し、談話的特徴の分析を行った。談話・会話分析と、マルチモーダル・コーパス分析の手法を取り入れ、発話者の語彙数、ターン交替の特徴等について、量的・質的な分析を行った。今回の分析では特に、左記の2点に注目し、談話的分析を試みた:(1)CLIL授業内でみられる、発話者の日本語から英語へのコードスイッチの形式と機能の分類、及び(2)CLIL授業内での学生間二者間会話と、一般英語クラスでの学生間二者間会話の談話的特徴の違い。(1)の分析結果を学術誌へ投稿、(2)の分析を国際応用言語学会(2014年8月)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の計画通り、マクロ的な分析(多言語主義と言語政策)、ミクロ的な分析(学習者間会話の談話分析)、スペインの大学でのCLIL実践視察、及びCLILのアプローチを取り入れた授業実践を行った。分析結果の一部を、論文に投稿・掲載(2件)、また国際学会にて発表した(口頭発表1件、ポスター発表1件)。 マクロ的な分析は、概ね予定通り進捗している。日本・スペインの大学でのCLIL導入の背景となる政策に関する文献調査を進め、両国の大学にてCLILを実践している教員へのインタビュー(日本3名、スペイン2名)、および学部生へのアンケート調査(日本 約30人、スペイン 約100人)を実施した。 ミクロ的な分析は、やや遅れて進捗している。研究者自身が担当している、CLILアプローチを取り入れた授業の中で生じる学生間会話を収録するため、学生たちに自発的な研究への協力を促しているが、予定よりもデータ収録数が少ない状態である。ただしパイロット・スタディを実施するためには十分なデータ量であり、学習者のコードスイッチングの使用に関する分析、およびCLILを取り入れた講義と一般英語会話授業での二者会話の談話的特徴を比較する分析を行い、分析手法を確立した。 スペインの大学でのCLIL実践視察、および日本の大学での試験的なCLIL実践については、概ね順調に進捗している。H27年3月に、マドリッド・コンプルテンセ大学にて開講されているCLILを取り入れた講義を視察(大学3クラス)し、さらに研究協力者マリア・ムリーリョ氏の協力により、マドリッドの公立高等学校を訪れ、英語によるCLILを取り入れた授業(2クラス)を視察する機会を得た。また東海大学にて研究者が担当する授業にて、CLILを取り入れた講義を実践し、日本の大学教育に適したCLIL実践のあり方について検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度の海外実態調査及びパイロット研究を踏まえ、H27年度は、海外の大学でのCLIL実践視察・実態調査、東海大学でのCLIL実践の再考・実践を行い、CLILの場における学習者間会話のデータ収録・分析をさらに進める。 スペインの大学におけるCLIL実態調査及び学術交流を継続し、CLIL実践の具体的な方策の調査、及び指導者や学習者に対する意識調査(アンケート調査、インタビュー、及びフォーカスグループによる調査)を行う。また研究者間の交流のため、海外から専門家を招聘し、ワークショップ等を開催することも検討している。 日本の大学のCLIL実践の場で、学習者間会話データの収録を行い、パイロット・スタディで確立した手法を用いて談話的特徴の分析進める。さらにCLILを取り入れた授業を受講した学部生を対象に、アンケートとフォーカスグループによる意識調査を実施し、CLIL授業体験への態度・意見を取り入れることで、会話データ分析に加え、より多面的な分析・考察を行う予定である。フォーカスグループによる意識調査で得たデータの分析には、質的分析ツールNvivoを使用し、機能文法の理論も取り入れ、考察を行う予定である。 収集した会話データと意識調査(アンケート・インタビュー)の分析結果を、国内外の学会と学術雑誌への投稿を行う予定である。研究結果の一部を、2015年7月に開催される国際語用論学会、及び2016年1月に開催されるJACET言語教師認知研究会にて、口頭発表を行うことが決定している。また2015年9月に開催されるICLHE(Integrating Content and Language in Higher Education)学会に応募し、採択結果を待っている。日本とスペインの学部生を対象としたCLILに対するアンケート調査結果をまとめ、論文投稿の準備を進めている。
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