2016 Fiscal Year Research-status Report
他者の共感を引き出す感情表出の特徴の解明:表情と音声を用いた視聴覚感情表出の検討
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26870608
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
高木 幸子 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (60638782)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共感性 / 感情 / 対人コミュニケーション / 表情 / 音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれのコミュニケーション活動を通じて相互支援的な社会が形成されるためには、他者に共感を示すことと同様に、他者から共感を得ることも非常に重要である。本研究ではこれまでの研究を発展させ、高次感情の表出と知覚の関連性を確認したうえで、他者からの共感を引き出しやすい表情と音声による感情表現はどのようなものかを検討する。上述の目的に沿って、平成28年度は以下の研究および発表をおこなった。
コミュニケーション場面では、表情と音声そのものの感情表現の違いや場の状況の違いに応じて、同じセリフを発していたとしても知覚される感情に差が出ることが予想される。表情と音声の影響を同時に検討する場合、先行研究では社会的文脈の影響までが考慮されることは少なく、また喜びや怒りといった快/不快が明確な感情のみがターゲットとされることが多かった。筆者の実験では、快/不快両方の高次感情を検討対象とし、社会的文脈を考慮した上で、表情と音声による高次感情情報の相互作用が受け手に及ぼす印象を検討した。実験参加者は女子大生20名であり、4種の社会的文脈下で表現されたという前提で刺激人物の表情と音声による感情表現を観察し、刺激人物の①快/不快の程度、②刺激人物の自分に対する好意度を6件法で評価させた。実験結果から、高次感情の快/不快は顔のみでは判断できないが、声のみでは判断できるという知見が得られた。つまり、高次感情の表現では音声が非常に重要な役割を担うことが示唆された。
平成28年度は上述の研究成果を、ICP2016(2016年7月)およびHCS2016-101(3月研究会)で発表した。また、上記の実験における実験参加者は女性のみであったが、男性参加者でも同様の知見が得られるのか、あるいは結果には性差がみられるのかを検討するため、同様の実験パラダイムを用いた追加実験をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は所属先の異動に伴い、実験実施および成果発表には遅れが生じていた。しかし、今年度は、実験実施計画および成果発表計画が順調に推移し、おおむね順調な進捗であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究を発展させるため、今後の推進方策を以下のように予定している。 (1)実験参加者の性差の影響の検討:平成28年度は、男性参加者からもデータを得た。これらを昨年度までのデータと合わせて分析し、性差についての分析および検討をおこなう。 (2)社会的スキルとの関連性の検討:実験参加者の社会的スキルを同時に測定し、実験結果と各参加者の社会的スキルの関連性を検討する。 (3)親密度に関する操作:刺激モデル人物との関係性の設定を変えることにより、親密度を操作した実験の実施を計画している。これによって、親密度が表情と音声による感情表現の解釈に及ぼす影響も同時に検討する。 上述のように、測定対象者および測定指標を増やすことによって、他者の共感性を引き出しやすい感情表現の特徴をより詳細かつ多面的に検討する。まお、実験によって得られた成果については、学会および論文を通じて公表する予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度の学期途中(2015年9月)での異動、および異動に伴う研究費と実験機材の移管に時間を要し、研究進捗に遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度が研究最終年度となるため、これまでのデータの整理等に伴う人件費を計上する予定である。 また、研究成果発表に伴う経費および追加実験実施の際の物品費と謝金を計上する予定である。
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