2014 Fiscal Year Research-status Report
多点接触制御手法を用いた宇宙ロボットによる衛星捕獲作業の準最適化手法の確立
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26870616
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Research Institution | Research Institute of Shimizu Construction Co. |
Principal Investigator |
鵜山 尚大 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, 研究員 (60647717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙ロボット / 衛星捕獲 / 接触制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,軌道上を周回する故障衛星などの非協力的ターゲットと呼ばれる対象物体を,宇宙ロボットにより安全かつ確実に捕獲するために,捕獲時の複数点接触による突き飛ばしや複雑な回転運動などを抑制するための接触制御手法の研究を行っている. 本年度は,これまでの研究で対象としてきた接触後の並進運動の制御(突き飛ばしの抑制)の新たなパラメータチューニング手法の開発,並びに新たに回転運動を考慮した接触力学と制御手法の検討を行った.並進運動の制御に関しては,従来接触し続けることを目標とする厳しい条件を課してきた点を緩和し,一度の接触でロボット・対象衛星間の相対運動をゼロとする条件の検討を行った.ここではロボットの手先は一度対象衛星から離れてしまうが,お互いの重心間の相対運動はゼロとなる条件を,制御パラメータを適切にチューニングすることで達成することが可能となることを示した.次に,これまで扱ってこなかった回転運動を考慮した接触時のダイナミクスと制御手法の検討を,主にダイナミクスシミュレーションにより行った.従来の接触手法をそのまま3次元的な多点接触に適用すると,ある接触点の運動が別の接触点の運動へ影響し,不安定な状態を作り出してしまう課題が改めて確認できた.よって,問題を簡単にするため2次元平面上の運動に限定し,接触時のダイナミクスを再考することで,制御手法と目標とするパラメータの選定を行った. また,上記で構築した理論の妥当性を検証するための地上試験機の開発も行った.石定盤と空気ベアリングを用いた既存の2次元微小重力環境を利用することとし,本研究で用いる宇宙ロボット模擬装置を新たに開発した.メインの計算機ボード,アーム構築のためのアクチュエータ,接触力計測のための力覚センサ等を搭載し,内部センサおよび外部からの赤外線反射によるモーショントラッキングシステムにより運動計測可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は概ね順調に推移していると考えている.本研究では人工衛星捕獲時の準最適な接触手法を提案することを最終目標としている.研究の方針としては接触ダイナミクスに基づく接触制御手法の構築を掲げている.そのために解決すべき課題は, 1)人工衛星上の複数の点で接触した際の回転運動のカップリング効果の数学的簡略化や,数値的,及び実験的な検証 2)従来の接触制御手法を多点接触に対応できるよう拡張または変更 3)最適化手法(または準最適化手法)の適用 4)実験検証用プラットフォームの製作 の4点である.本年度は数学的及び数値的な接触ダイナミクスの検証と,実験用プラットフォームの製作を行った.制御則の拡張も同時に行っており,今後も順調に進めば目標は達成できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目以降は接触ダイナミクス及び接触制御手法の検証を重ねていくのと同時に,最適化手法の適用を検討する.微小重力環境での接触制御を難しくする要因として,回転運動の複雑さが挙げられる.2次元平面上に運動を限定して考えれば,衛星はある軸を中心とした単純な回転運動をするが,3次元的な振る舞いを考慮すると,ある軸の回転が別の軸の回転に影響を及ぼすため,その複雑さを考慮した制御則が必要であると考えられる.衛星捕獲を例に挙げれば,単軸スピン状態の衛星に接触すると,別の軸周りに運動が誘起されてしまい,ロボットとの接触の危険性が高まる. 全ての条件を考慮した制御則の構築は難しいため,今後の研究では条件を絞った上で回転運動を誘起しない,または回転を抑制する手法を検討する.衛星に触れても回転しないまたは回転を止めることができればその後の作業における安全性の向上が期待できるためである.摩擦などの数学モデルの利用が難しい部分は実験的に,あるいは数学的な近似モデルを利用することで影響を加味する.
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Causes of Carryover |
所属機関が変わったことにより,物品購入予定に変更が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越分は国内外会議での成果発表や研究動向調査,ロボット用消耗品等に使用する.
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