2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870621
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小島 陽子 日本大学, 生産工学部, 助教 (30548095)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アンコール王朝 / 古道 / 宿駅 / 施療院付属寺院 / カンボジア / クメール / 伽藍配置 / 寸法構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究期間には、カンボジアにおける現地調査を2回実施した。調査対象は、古道沿いの8つの宿駅と、11の施療院付属寺院である。各伽藍では、主として次の5項目について調査を行った。ⅰ)伽藍の配置計画、ⅱ)各建物の材料や石積みなどの基本構成、ⅲ)各建物の平面の構成、ⅳ)各建物の立面の構成、ⅴ)各建物の屋蓋の構成。
現在、これらの調査項目の検証を進めているところであるが、これまでに次の3点が明らかとなっている。 ①宿駅は、都城にみられる大伽藍内及び北方・東方へのびる古道沿いに分布しており、その他の沿道には木造の宿駅が存在していた可能性も考えられる。北方ルート及び西方ルート沿道の宿駅、及び大伽藍内の宿駅は、各建物の外形は類似しているが、石材の種類や石の積み方などが異なる。また、東方ルート沿道の宿駅の主室が、十字形平面に尖塔状の屋蓋を有する都城の寺院の構成と類似しているのに対し、北方ルート及び東方ルート伽藍内の宿駅では、その構成を簡略化したような構成であることが明らかとなった。 ②広域に分布する施療院付属寺院においても、伽藍構成や各建物の外形は類似しているが、石材の種類や石の積み方、伽藍の規模などに違いがみられた。また、各伽藍における祠堂の主室は、十字形平面に尖塔状の屋蓋を有する都城の寺院と類似する構成であり、この平面形状の違いによる分類と、伽藍の配置計画の違いによる分類から、アンコール地域に位置する施療院付属寺院と地方の施療院付属寺院に大別できることが明らかとなった。 ③これまで、それぞれ同形状の伽藍であるとみなされてきた宿駅や施療院付属寺院において、地域ごとに建物の平面や屋蓋の構成、伽藍の配置計画に違いがみられることが明らかとなった。これらは、地方の技術差や創建時期の差によると考えられる。今後、同時代に造営された都城の寺院の平面及び屋蓋の構成の変化を軸に考察を進めてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、所属する研究機関の移動があり、現地調査の期間や回数について、当初の計画通りに行うことができなかった。このため、資料の収集や整理の状況、また論文の執筆状況にやや遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、夏期と冬期に1回ずつ、カンボジアを中心として現地調査を行う予定である。古道沿いの宿駅と、地方の施療院付属寺院について、より多くの実測図面を作成し、これまでの検討結果を軸として検証を進め、論文にまとめる。 本研究の推進には、現地での実測調査を効率よく行うことが重要となる。事前に現地の研究機関からの情報の収集と精査を十分に行い、調査では、現地の研究者に調査協力をいただく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、所属する研究機関の移動により、現地での調査について、当初予定した期間や回数を行うことができなかった。これより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、当初予定した現地調査を行うための旅費や調査協力者への謝金に使用する。また、論文等の投稿費用に使用する予定である。
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