2014 Fiscal Year Research-status Report
占領下における女性の沖縄復帰運動に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
26870626
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高橋 順子 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (90555434)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 沖縄 / 復帰運動 / 女性運動 / 沖縄教職員会 / 沖縄婦人連合会 / ジェンダー / 占領 / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1945年から1972年まで日本と切り離され、アメリカの施政権下に置かれた沖縄において、女性がどのように日本復帰運動に取り組んできたのか、活動内容を実証的に検討し、分析することである。具体的には、女性の復帰運動を牽引した沖縄教職員会婦人部と沖縄婦人連合会が中心となる。それぞれの本土側の関連組織である日本教職員組合婦人部、全国地域婦人団体連絡協議会にも注目する。 2014年度は、沖縄県立図書館、鹿児島県立奄美図書館、読谷村立図書館、沖縄県教職員組合、中頭教育会館、奄美教育会館、琉球大学図書館等において、研究課題に関する文献・文書等の収集とその整理・検討に努めた。加えて、当事者および関係者十数名にインタビュー調査を実施した。インタビューでは女性だけでなく、男性も対象とし、男性から見た女性の復帰運動についても聞き取りを進めている。資料調査、インタビュー調査ともに沖縄島の運動の中心である中部について重点的に行った。また、奄美諸島について基礎的調査を実施した。 論文等としては、『沖縄県史 女性編』にコラム(2015年度発行予定)を執筆した。ここでは主に戦後沖縄における女性教員の社会的位置づけ、数量的変遷に着目しながら、沖縄教職員会における女性の活動の概要と復帰運動について分析した。 学会発表としては、第18回世界社会学会(2014年7月、パシフィコ横浜)において、”Women's reversion-to-Japan movement in Okinawa”と題して口頭報告を行った。ここでは特に沖縄県中部の教職員の事例に注目し、女性の復帰運動について、インタビュー調査を基礎とし、当事者たちの経験や思いに着目した。その成果を論文として2015年度中に発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、資料収集、インタビュー調査について沖縄で複数回調査を実施し、一定の成果をあげることができた。特に中部を中心として沖縄教職員会に関する調査が大きく進展した。また、2015年度に計画していた奄美諸島についても、基礎的調査の機会を得たため、前倒しをして2014年度に実施し、教職員会と婦人会の概要について大きな成果を得ることができた。そのため2014年度に調査予定であった宮古諸島については2015年度に実施予定とした。分析としては、組織的活動と個人的経験、本土との交流、沖縄島と離島などの双方に注目しながら進めた。 成果の作成・発表としては、論文等、口頭報告について、概ね予定通り実施した。ただし、2014年度に発表を予定していた論文については、掲載書の発行が次年度に変更となったため、2015年度に新しい成果も取り入れて発表する。また先述の通り、2014年度に世界社会学会で報告した中部の事例からみた女性教員の復帰運動について、論文として発表する準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度の成果を踏まえ、沖縄教職員会、沖縄婦人連合会について資料収集、インタビュー調査、分析を継続する。沖縄教職員会ついて順調に調査が進んでいるため、2015年度は特に沖縄婦人連合会について重点的に実施する。 組織だけでなく、個人にも注目するため、自分史等の収集、分析を継続して進める。また補助資料として、議会史、新聞(『琉球新報』、『沖縄タイムス』)、雑誌等の分析も継続して進める。地域としては、沖縄諸島、奄美諸島のほか、2015年度以降は宮古諸島、八重山諸島についても調査を実施していく。 成果の発表について、女性教員の活動に関する論文を執筆する。また沖縄婦人連合会に関する口頭報告として、第88回日本社会学会等(2015年9月開催)に応募する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、主に旅費、人件費・謝金が少なかったことによっている。旅費については、初年度調査地を宮古島から奄美大島に変更したことによる。人件費・謝金については、インタビューの謝金と資料整理のアルバイト代等が発生する予定であったが、2014年度は両方とも生じなかった。前者は、実施したインタビューにおいて対象者から謝金を辞退されたためである。研究の計画に必要不可欠であるが、支出が生じないことを予測することは難しい経費である。後者は、研究の進捗状況に鑑み、より効率よく経費を使用するための措置として、アルバイトの必要な資料整理を次年度以降に変更したためである。 なお、研究の達成度について、これらの変更による影響は生じていない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費については、2014年度に予定していた宮古島調査を2015年度に実施するため、必要な経費となる。人件費・謝金についても、インタビュー調査と資料整理のアルバイトとして、2015年度に必要な経費である。
|