2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870629
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
村上 隆啓 明治大学, 理工学部, 講師 (50409463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 老人性難聴 / 話速変換 / スペクトル変換 / 信号の開始点 / 位相スペクトル / phase vocoder |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,高周波数帯域の感度が低下した老人性難聴を想定して,話速変換技術を応用したスペクトル変換技術の開発を行うものである.話速変換技術は,音の高さを変化させることなく話速の早さのみを変換する技術で,録音した音をゆっくりまたは早口に変換することができる.スペクトル変換技術は,信号を構成している周波数成分を任意の周波数へ移動する技術である.本研究では,話速変換技術における波形の歪みの低減技術を応用して,従来のスペクトル変換技術において発生する波形の歪みの低減を行う. 本研究が着目している波形の歪みの低減技術では,信号を時間周波数領域へ変換するために用いる短時間フーリエ変換(STFT)におけるフレーム長を動的に変化させることで,時間領域へ逆変換したときに発生する波形の歪みを抑制する.平成26年度の研究では,この技術を音声信号のスペクトル変換に応用したが,その中で,フレーム長を動的に変化させるタイミングが非常に重要であることが明らかとなった.この問題は,あるフレーム内で信号が開始されたときに,その信号の開始点を推定することと等価である.そこで,フレーム内における信号の開始をモデル化し,その周波数領域表現を解析した.その結果,フレーム内における信号の開始点とスペクトルの関係が明らかとなった.また,得られた関係を利用して,信号のパワースペクトルに現れるメインローブの幅を利用した,フレーム内における信号の開始点の推定アルゴリズムを提案した. 一方,本研究が着目しているスペクトル変換技術は,信号を時間周波数領域へ変換して得られる位相スペクトルを利用している.そのため,得られる位相スペクトルに含まれる雑音の影響を取り除くことも,波形の歪みの低減につながる.そこで,位相スペクトルに現れる時間方向および周波数方向における変化量の一貫性を利用した,位相スペクトルの補正方法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,平成26年度内にスペクトル変換における波形の歪みの抑制技術を確立し,様々な音声データを使用してスペクトル変換を行い,健聴者によるスペクトル変換された音声の音質の聞き取りテストを行う予定であった.しかし,スペクトル変換における波形の歪みの抑制技術において,STFTに用いるフレーム長を動的に変化させるタイミングが非常に重要であることが明らかとなったため,そのタイミングを決定するアルゴリズムが必要となった.その結果,平成26年度はこのアルゴリズムの開発を重点的に行うこととなり,健聴者による音質の聞き取りテストを実施しなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
STFTに用いるフレーム長を動的に変化させるタイミングを決定するためのアルゴリズムがある程度完成したので,これをスペクトル変換における波形の歪み抑制技術に組み込む.これによって得られるアルゴリズムを使用して,様々な音声データのスペクトル変換を行い,健聴者による音質の聞き取りテストを行う.その結果,十分な結果が得られた場合は,同じデータを用いて,老人性難聴者による聞き取りテストを実施する.十分な結果が得られなかった場合は,引き続きスペクトル変換技術の改善を行う.老人性難聴者による聞き取りテストにおいても十分な結果が得られた場合は,このアルゴリズムをDSP等の小型機器へ実装し,性能を評価する.
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Causes of Carryover |
平成26年度は,スペクトル変換を行った音声信号の音質の聞き取りテストで使用するために,音響用スピーカおよび音響用アンプの購入価格を計上した.しかし,研究を進める中で,実験方法をこれらの機器を使用する方法から,これらの機器と比較して安価である片耳のみを密閉するヘッドホンを使用する方法に切り替えた.そのため,当初予定していた助成金額より使用金額が少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,国外で開催される国際会議での研究成果発表を予定しており,そのための旅費を計上した.しかし,円安が大幅に進んだため,計上した金額では旅費に不足が出る.そこで,旅費の不足分に次年度使用額の分を充てる.
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