2015 Fiscal Year Research-status Report
フィジー、ダワサム地域における神話と環境ディスコースに関する人類学的研究
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26870634
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
浅井 優一 順天堂大学, 国際教養学部, 助教 (80726860)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フィジー / 環境保護 / 談話分析 / 神話 / 儀礼 / ディスコース / 言語人類学 / オセアニア |
Outline of Annual Research Achievements |
フィジーにおける環境運動を、提唱者側の視点のみならず、実際に実践する地域住民側の視点にも注目し、環境運動が在地で共有されている文化的コスモロジーによって意味付けられるプロセスを明らかにした。環境社会学や環境歴史学、政治生態学に代表される、社会学的問題群との関連から環境を分析する従来の研究枠組みを拡大し、言語、知識、コスモロジーなどの「文化」的問題系を分析の射程に収めることで、従来は文化的問題系とは切り離されて実践・研究されてきたフィジーの環境運動と、サーリンズ以来、オセアニア文化研究における中心的テーマを成してきた「神話」「伝統」「キリスト教」などの人類学的諸議論との関連性を、具体的に解明できた。 また、フィジーにおける多くのコミュニティにとって、環境運動とは社会文化、歴史といった特定のコンテクストに根ざして実践される活動としての性格を持っている。特定のコミュニティにとって「効果的」で「持続可能」な環境運動を推進するためには、当該コミュニティの社会文化的コスモロジーの中で、いかにして環境運動が実践されうるのかを克明に記述することが求められる。今年度の研究では、環境研究と文化研究の両分野を視野に入れ、社会や文化を考察の射程に含めない環境研究、そして、環境に関わる問題を度外視した社会文化研究、これら双方の欠点を補完することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、ダワサム地域住民による「環境保護」についての語りと、彼ら彼女らが日常的に営む、神話やキリスト教についての語り、この両者の相関関係について分析を進め、地域住民側が環境保護を受容した際に前提とした文化的コスモロジーについて、ダワサム地域での調査結果から明らかにすることができた。国内外での文献研究も並行して行い、学会や共同研究会等で調査結果の中間報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、フィジー・ナウソリ市郊外に所在するペンテコステ系キリスト教団体の本部において、教団創設者や教団員などへのインタビューを行う。そして、彼らがダワサム地域のナタレイラ村で行った儀礼用具焼却を伴う「土地浄化儀礼」、および、それを当該村落で実行した根拠とその影響について、教団の思想的背景と合わせて審らかにする。その上で、最終的な研究成果の報告を準備する。
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Causes of Carryover |
計画していた調査および学会発表での支出が、当初の見積より割安となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の現地調査、および学会発表に費やす。
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Research Products
(7 results)