2014 Fiscal Year Research-status Report
非集計行動モデルを用いた航空と高速鉄道の提携に関する研究
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26870643
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 公俊 秋田県立大学, システム科学技術学部, 特任助教 (60609527)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 航空と鉄道 / 数理モデル / 多項ロジットモデル / 企業間提携 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、航空と高速鉄道の提携が注目されている。中短距離市場において高速鉄道を既存の航空路線の代替機関として利用できれば、空港の混雑緩和だけでなく、地方都市の活性化や災害時の代替移動手段の確保などの社会的効果が期待される。両機関の提携により、国際線に接続する鉄道の区間も、航空券と一緒に購入できるサービスがドイツやフランスなどで始まっている。本研究では、このようなサービスが社会的厚生および空港の混雑緩和に対してどの程度の効果があるかを評価するための数理モデルを構築し、検証することが目的である。 本年度は、先行研究を多項ロジットモデルを用いたモデルに拡張することで、各機関の特性や顧客の嗜好を需要モデルに取り入れた。ここでは、国外の都市Aから空港のある都市Bで乗り換え、国内Cへ鉄道または航空で移動するルートを考える。まず、空港Bの発着容量に制約のない場合において、航空と鉄道が競合するモデルと提携するモデルをそれぞれ定式化した。2つのモデルから得られた最適価格や市場シェア、企業利益、消費者余剰、社会的厚生を3都市間の各輸送市場AB、BC、ABCにおいて比較し、提携効果を定性的に分析した。その結果、(i)都市BとCの距離が比較的近いほど、提携サービスの利用者が増加し、空港の混雑緩和に効果がある、(ii)提携により、乗り換え市場ABCの旅客数および社会的厚生は増加し、国内市場BCの旅客数は減少することが明らかとなった。この結果は、5月に香港で開催された「7th International Forum on Shipping, Ports and Airports」と6月に名古屋で開催された「第4回中部圏研究フォーラム」にて報告した。 現在は、空港Bの発着容量に制約のある場合にモデルを拡張し、容量制約が提携効果に与える影響を分析している。ここまでに得られた研究成果を学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は先行研究の拡張である。航空と鉄道の提携モデルはSocorro and Viecens (2013)およびJiang and Zhang (2014)により提案されているが、価格と需要の関係を示す関数が線形であり、移動時間や距離、運行本数、サービスなど顧客が輸送機関を選択する要因を考慮できない。本研究のスタートとして、従来研究と同様の輸送ネットワークにおいて需要関数を非集計行動モデルにおけるロジットモデルを用いて拡張することで、より現実的なモデルを構築することが目的である。本年度はモデルの拡張および各輸送機関の最適価格や市場シェアを解析的に求めることができたため、目的は達成できたといえる。 2つ目の目的は、社会的厚生やハブ空港の混雑率を競合モデルと比較し、提携効果の定性的な性質を明らかにすることである。空港の発着容量に制約のない場合には、モデルが複雑でないため、いくつかの性質を得ることができた。しかし、空港の容量制約を考慮した場合には、モデルから得られた結果が複雑であり、競合モデルと提携モデルの比較が難しい。このため、数値計算を通して、提携効果を分析した。航空と鉄道のサービス品質の差や市場の顧客数など輸送環境に応じて、提携効果に異なる結果が得られたため、どのような条件の下で提携により空港の混雑が緩和されるか、社会的厚生が増加するかを明らかにする必要がある。平成26年度はこの点まで進められなかったため、達成度の評価として、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度におこなった研究では、3都市ネットワークにおいて乗り換え空港である混雑空港(ハブ空港)に鉄道を乗り入れるという状況の下で、空港の混雑緩和を議論した。しかし、日本国内のように高速鉄道網が整備されている場合には、非混雑空港に鉄道を乗り入れ(または、直接乗り入れるのでなく、シャトルバスを利用して空港から駅への移動サービスを提供し)、混雑空港のある地域へ鉄道輸送することも可能である。例えば、国外から羽田空港へ直接向かうのでなく、国外から中部国際空港を経由し、新幹線で首都圏に移動する旅程が考えれる。このように地方空港を利用した航空と鉄道の提携サービスが効果的であれば、混雑空港の緩和だけでなく、非混雑空港の維持や多様な航空網の整備につながると思われる。したがって、平成26年度とは異なる3都市ネットワークにおける提携効果を分析することが第1の課題である。 第2の課題は、研究計画の通り、競合他社の存在を考慮することである。他社の価格決定やサービスは提携サービスの価格や利用者の選択に大きく影響するため、他社の存在が提携効果にどのような影響を与えるかを分析する。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] 価格調整による在庫管理2015
Author(s)
佐藤公俊
Organizer
第10回「地域の明日を考える」大学セミナー
Place of Presentation
由利本荘市文化交流会館カダーレ
Year and Date
2015-02-12 – 2015-02-13
Invited
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