2015 Fiscal Year Annual Research Report
EUにおける「援助協調」枠組みの形成―独自の戦略・制度・組織・評価システムの構築
Project/Area Number |
26870650
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩野 智 早稲田大学, 政治経済学術院, その他 (40634770)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際統合 / 欧州連合(EU) / 一貫性 / 開発協力 / 安全保障 / アフリカ / 援助予算 / プリンシパル・エージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、欧州連合(EU)における「援助協調」枠組みの形成要因について明らかにすることを目的とする。「援助協調」の具体例として、EUの途上国(とくにサブサハラ・アフリカ)に対する開発協力政策と他の諸政策(具体的には共通通商政策、共通外交・安全保障政策および気候変動政策)との間の「一貫性」の確保に焦点を当てる。「一貫性」を確保するために、欧州委員会と加盟国との間でどのような利害調整がおこなわれ、その結果EUレベルでどのような制度が形成されてきたのかを明らかにする。 研究方法として、当該年度はEUの開発協力政策と気候変動政策がリンケージした、途上国の気候変動対策を支援するための援助基金「グローバル気候変動アライアンス」(GCCA)を事例として取り上げた。同基金が形成される過程において、欧州委員会と加盟国との間で運用制度(予算の規模やその調達方法など)をめぐる交渉があり、そこでの議論の内容と妥協に至る過程を観察することで、EUにおける「援助協調」の形成要因の一部が解明されることになる。なお、前年度の事例分析と同様に、分析枠組みとしてプリンシパル・エージェント理論を使用した。 分析の結果、欧州委員会が当初提案した運用制度(EUの予算だけでなく加盟国の予算も用いて基金を構成する)は、加盟国の支持が得られず実現しなかったことが判明した。これは、GCCAの予算執行権限が加盟国に残されたことを意味する。加盟国が同権限を欧州委員会に委譲しなかった理由は、主にGCCAを通じた援助予算の拠出が加盟国の取引コストを低下させず、むしろ上昇させるおそれがあったことにある。 本研究全体の結論として、EUにおいて「援助協調」枠組みが形成されるためには、加盟国がEUの政策に協力するかどうかが重要であり、それを左右するのは主に加盟国の取引コストと加盟国の欧州委員会に対する統制の確保であることが明らかとなった。
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