2016 Fiscal Year Research-status Report
子ども・子育て期の親が復興の主体となる支援システム―3つの大震災を事例として―
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26870652
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
安部 芳絵 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 准教授 (90386574)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 子ども支援 / レジリエンス / PTG / 震災とジェンダー / 教育復興担当教員 / 阪神・淡路大震災 / 中越大震災 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果をふまえ、支援者のゆらぎが新しい支援システムを生み出していくプロセスを実証的に明らかにするために、①東日本大震災復興計画、②阪神淡路大震災教育復興担当教員、③東日本大震災子ども支援、④中越大震災子育て支援の4つを調査対象として設定した。 【具体的内容】 (a)文献調査…①~④に関わる資料を収集し、インタビュー調査と論文執筆の基礎資料とした。(b)インタビュー調査…③石巻市子どもセンター職員への調査、気仙沼市公立教員への調査を継続実施した。④中越大震災子育て支援に関連して、長岡市ウィメンズスタディズ・ネットワーキング、新潟県中越大震災「女たちの震災復興」を推進する会に対してインタビュー調査を実施した。(c)研究成果の発表…学会発表、論文の投稿(査読有)、著書の刊行とそれに伴う新聞・雑誌等のインタビューを受けた。 【意義・重要性】 (a)文献調査…東日本大震災から5年、中越大震災から12年、阪神・淡路大震災から21年が経過したことから、節目の年に取り組まれた活動の報告書・資料等を中心に収集した。(b)インタビュー調査…石巻市子どもセンター職員の支援行為および中越大震災で自ら被災した市民団体メンバーの支援行為がどのようにシステムへ転化していくかに焦点を当てて、調査分析を行った。(c)研究の公表…①③を踏まえて、石巻市における震災後の子ども参加意識に関わる調査を分析し、学会発表と論文として発表した(査読有)。①~④を踏まえて、単著『災害と子ども支援』を出版した。「全私学新聞」「今日新聞」「河北新報」「週刊教育史料」『We Learn』に単著が紹介され、『子どもの権利研究』『ジェンダー研究21』に書評が掲載された。学術誌だけでなく、ひろく一般向けに紹介されている点は重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に大きな問題は見受けられない。 2016年度は阪神・淡路大震災と東日本大震災を中心とした調査を予定していたが、中越大震災被災地域での調査研究が地域を巻き込みながら進んだことから、東日本大震災と中越大震災を中心に調査を展開し、阪神・淡路大震災については成果をまとめることに力点をおいた。 既に震災後20年が経過した阪神・淡路大震災や、10年が経過した中越大震災の分析から明らかとなったのは、1.震災を契機に浮上した課題が長期にわたって子どもや親・地域に蓄積され、より見えにくくなっていくこと、2.年月の経過とともに震災が風化していくのに対し、誰がどのように語り継いでいくかが大きな課題であり、そのなかで子どもをどう位置付けていくかが問われている。東日本大震災から6年が経過し、同様の状況が東日本大震災の被災地域でも見られるようになってきたことを踏まえて、研究をまとめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行に当たっては、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、石巻市子どもセンター、宮城県気仙沼市立中学校教諭、新潟県中越大震災「女たちの震災復興」を推進する会、兵庫県立舞子高等学校など調査協力者からの助言をもとに、被災地域の現状と乖離しない調査研究を引き続き心掛けたい。また、調査をすすめる上では、子どもとの接触が生じうる。調査倫理に関しては、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンの子どもの権利保護指針、工学院大学ヒトを対象とする研究に関する倫理審査に則ってインタビューを実施しており、基準を満たしている。引き続き、調査の際には子どもや支援者の人権保護に留意する。 なお、次年度の研究費使用計画は以下の通りである。 (a)インタビュー調査:2017年度は、補足調査として東日本大震災と阪神・淡路大震災を中心にインタビュー調査を実施する。東日本大震災に関しては、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン復興支援活動担当職員および石巻市子どもセンター職員を対象としたインタビューを予定している(夏~冬)。阪神・淡路大震災調査(夏~秋)については兵庫県立舞子高等学校環境防災科の教諭へのインタビュー調査と授業見学を予定している。それぞれ、調査のための旅費および文字おこしのための費用が必要になる。 (b)文献調査:東日本大震災から5年が経過し、研究成果に関わる出版物が増えてきたことから、文献の収集を行う。また中越大震災から10年、阪神・淡路大震災から20年の節目にあたって関連書籍や資料がまとめられていることから、文献収集もあわせて行うため、文献の購入や複写に関わる費用が必要となる。 (c)研究のまとめと公表 研究の成果は学会発表を行うとともに、一般向にわかりやすい方法での成果発表を計画している。学会への参加費用や投稿料、英文校正料などが必要である。
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Research Products
(3 results)