2016 Fiscal Year Research-status Report
人間の心理特性と振る舞いを利用した弱者のための携帯端末向けセキュリティ技術の研究
Project/Area Number |
26870660
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
宇田 隆哉 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 講師 (50350509)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 個人情報保護 / 個人識別 / バイオメトリクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、リテラシーの低いスマートフォンの利用者にも、高いセキュリティを提供できる技術の研究を行うものである。プロジェクトの最終年度となった平成28年度には、平成27年度までに考案して評価を行った、フリック入力による個人識別技術の特許出願と学術論文誌(ジャーナル)への投稿を行った。 本技術は、本プロジェクトの目的のとおり、リテラシーの低いスマートフォンの利用者が通常通りスマートフォンを利用する際に、文字を入力するフリック入力時の特徴を取得し、これを比較することにより、他人にスマートフォンを利用されている際に検知する技術である。平成27年度の研究で機械学習を導入し、個人を識別する精度が飛躍的に向上したため、平成28年1月4日に国際会議にて発表を行った。この技術の特許出願は平成28年6月30日に行った。 なお、フリック入力による個人識別技術の研究成果として、機械学習を用いない基本的な手法の提案を電子情報通信学会論文誌に、機械学習を用いて精度を向上する技術を情報処理学会論文誌にそれぞれ投稿したが、論文の構成や評価が不十分であるとされいずれも不採録となってしまった。論文誌へは平成29年度に再投稿する予定である。 また、クラウドコンピューティング環境を想定したセキュリティ技術の研究として、本プロジェクトで提案した仮想マシン上にOSをインストールすれば、リテラシーの低い利用者のファイルも自動的に保護される技術の実装を平成28年度に行った。この技術の提案は、平成28年3月23日に国際会議にて英語で発表を行っており、平成28年度に実装を試みた。しかし、理論上は可能であるが、我々の能力が及ばず、OSへ変更を加えることなくこの技術を実装することができなかった。OSへ変更を加えた実装に関しては、平成29年3月7日に、電子情報通信学会研究報告として国内で発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に行う研究の予定としては、平成27年度までに行ったフリック入力による個人識別技術の研究成果を論文誌(ジャーナル)への投稿することと特許出願、平成27年度までに提案したクラウドコンピューティング環境を想定した個人情報保護技術の実装と評価を行うことを計画していた。論文誌への投稿に関しては、フリック入力による個人識別技術の評価をまとめ、機械学習を用いない基本的な手法の提案を電子情報通信学会論文誌に、機械学習を用いて精度を向上する技術を情報処理学会論文誌にそれぞれ投稿したが、論文の構成や評価が不十分であるとされいずれも不採録となってしまった。再評価には時間が掛かるため、この点は進捗が遅れている。 また、クラウドコンピューティング環境を想定した個人情報保護技術に関しては、平成27年度末までの提案段階では理論的に可能であったが、我々の能力が及ばず、OSに改変を加えることなくこの技術を仮想マシン上に実装することが出来なかった。理論的には可能であるため、既存の仮想マシンに手を加えるのではなく、専用の仮想マシンを実装すれば実現は可能であるが、その実装は本プロジェクトの範囲を大きく逸脱することとなり、時間的にも金額的にも本プロジェクトの範囲内では不可能であると判断した。なお、OSに改変を加えれば実装は可能であるため、その実装に関しては、平成29年3月7日に、電子情報通信学会研究報告として国内で発表を行った。 平成28年度の後半に、進捗の遅れを取り戻せなかった理由は、平成28年度に新たに開始した、深層学習を用いたセキュリティ技術の研究の進捗が目覚ましかったためである。深層学習をセキュリティ技術に用いる研究は、世界的にほとんど行われておらず、こちらの研究を急いだため、本プロジェクトの遅れを取り戻すために多くの時間を割くことは出来なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、平成28年度に不採録となった論文誌(ジャーナル)への再投稿を行う予定である。情報処理学会論文誌および電子情報通信学会論文誌は、投稿時には料金は発生せず採録時に掲載料が発生する。平成28年度に予定していた論文誌の掲載料は平成29年度に繰り越しており、当初の予定通りこの予算で論文誌への再投稿を行う。 クラウドコンピューティング環境を想定した個人情報保護技術に関しては、平成28年度末の発表で区切りをつけたが、平成29年度に時間的余裕があれば、異なる手法で同様の目的を達成できないか再度検討をする予定である。 また、本プロジェクトとは直接関係ないが、平成28年度に新たに開始した、深層学習を用いたセキュリティ技術の研究の進捗が目覚ましく、それまでは精度が悪いため使用に値しなかった情報が、個人識別や個人情報保護に使用できるようになった。この技術を利用することで、本プロジェクトの目的を達成可能なものがあれば、平成29年度に積極的に行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
携帯端末にて実装を行った、フリック入力による個人識別技術の研究成果に関しては予定通り最終成果をまとめ、平成28年度に電子情報通信学会と情報処理学会の和文論文誌にそれぞれ投稿したが、不採録となり、評価方法を見直して平成29年度にそれぞれ再投稿するため。 また、サーバ側の実装を必要とする、クラウドコンピューティング環境を想定した個人情報保護技術に関しては、利用していた既存の仮想マシンのシステムの仕様上、計画していた実装が行えないことが判明したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
不採録となった、フリック入力による個人識別技術の研究成果の評価を見直し、再度評価を行うとともに、論文誌へ再投稿を行う。情報処理学会論文誌および電子情報通信学会論文誌は、投稿時には料金は発生せず採録時に掲載料が発生する。平成28年度に予定していた論文誌の掲載料を平成29年度に繰り越し、当初の予定通りこの予算を論文誌への再投稿に使用する。 クラウドコンピューティング環境を想定した個人情報保護技術に関しては、平成28年度末の発表で区切りをつけたが、時間的余裕があれば、異なる手法で同様の目的を達成できないか平成29年度に予算の範囲内で再検討する。 また、予算に余裕があれば、深層学習を用いたセキュリティ技術を適用することで、本プロジェクトの目的を達成可能なものを探し、平成29年度に積極的に研究を行っていきたい。
|
Research Products
(2 results)