2015 Fiscal Year Research-status Report
レジンモノマーの安全性を評価する先進的なセルベースアッセイ系の構築
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26870678
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
折本 愛 東北大学, 大学病院, 医員 (30710967)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ARE / レジンモノマー / 細胞毒性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
レジンモノマーの細胞毒性を低濃度から高感度に評価する手法として、細胞内の解毒代謝系で ある、「ARE(Anti-oxidant Responsive Element)活性」を発光測定で定量する細胞株、HepG2-AD13細胞を樹立し、生物発光を利用した細胞毒性試験法を構築している。 これまで、HepG2-AD13細胞におけるレジンモノマーのARE活性化における濃度依存性と細胞毒性の相関性を中心に行ってきた。そこで、細胞毒性評価に標準的に用いられるマウス線維芽細胞株のL929や正常歯肉線維芽細胞由来のGin-1細胞における、レジンモノマー刺激によるARE活性、細胞毒性の評価指標として細胞内グルタチオン濃度、WST-8を用いた細胞生存率の測定を行なった。L929細胞や、Gin-1 細胞においても、 相対的に応答率は低いものの、MMA による ARE 活性 の上昇の起こることが示された。ヒト歯肉線維芽細胞でも解毒応答が起こることを示し、解毒能が弱いため、 HEMA の毒性発現濃度が低濃度にシフトするが、MMA と HEMA は HepG2 と類似の細胞毒性を示した。作出したHepG2-AD13 細胞におけるレジンモノマーの 毒性は、正常歯肉線維芽細胞においても、レジンモノマー の毒性を反映しており、HepG2-AD13 細胞によるレジ ンモノマーの毒性評価が、正常歯肉線維芽細胞における 細胞毒性の良い指標となると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HepG2-AD13 細胞とGin-1細胞におけるMMA と HEMA の細胞毒性に関連した細胞応答の比較検討を中心に行ってきた。HepG2-AD13 細胞におけるレジンモノマーの 毒性は、Gin-1細胞においても反映しており、HepG2-AD13 細胞によるレジンモノマーの毒性評価が、正常歯肉線維芽細胞における 細胞毒性の良い指標となると支持する良好な研究結果が得られた。 しかし、Gin-1細胞は HepG2 細胞と比較してグルタチオン解毒機能が発達していないため、レジンモノマーに対する ARE 活性の応 答率が低く、MMA低濃度(10 mM 以下)の作用を比較するのは、困難であった。また、MMA高濃度側(10 mM 以上)の 作用は、レジンモノマーによる細胞に対するダメージの ため、内部標準となるルシフェラーゼ活性が急激に低下 し、正確に評価できなかった。そのため、Gin-1 細胞では、レジンモノマーの濃度依存的な ARE 活性化能 の違いで、レジンモノマーの毒性の強さを解析すること は困難であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ARE活性の基盤となるKeap1によるレジンモノマー認識能の解析を進めたい。 GSTを含む第二相異物代謝遺伝子群の発現誘導においては、センサータンパク質Keap1が異物を感知し、Keap1システイン残基のスルフヒドリル(SH)基が異物による修飾を受け、Keap1による分解制御から逃れた転写因子Nrf2が核内に移行してAREを活性化する(Wakabayashi N, et al., PNAS. 2004)。申請者は、これまでにHEMAが多くの異物と同様に、このKeap1-Nrf2経路でAREを活性化することを報告した(Orimoto A, et al., PLoS One, 2013)。 そこでHepG2 細胞 におけるKeap1とNrf2の強制発現により、HEMA以外のレジンモノマーがKeap1-Nrf2経路でAREを活性化しているのかを調べ、レジンモノマーの低濃度からのARE活性化の分子機構とレジンモノマーの毒性の高さの関連性を明らかにするため研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
Addgene商品のプラスミド、8xGTIIC-Iuciferaseの購入に際し、MTAを作製が必要となった。MTA作製にあたり、所属機関の知財担当部署とのやりとりに時間を要した事、この製品が輸入製品であり納品までに時間を要した、理由により納品が今年度中に間に合わなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
歯科材料による細胞毒性関連遺伝子発現解析に、ルシフェラーゼを用いたレポーターアッセイを適用し、これまでに、Keap1-Nrf2経路で解毒の中心的な遺伝子発現応答であるARE活性を発光測定で定量してきまたが、今後は歯科材料がHippo 経路の中心的な役割を果たす転写共役因子であるYAP/TAZに及ぼす影響をARE活性と比較検討する.
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Research Products
(5 results)