2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870708
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平塚 順良 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40632807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 阮綿審 / 『鼓枻詞』 / 『楽府探珠』 / 『呉騒三集』 / 『呉騒合編』 / 『楽府争奇』 / 国際研究者交流 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ベトナムに所蔵されている漢籍、あるいはベトナムで刊行された漢籍を調査し、それを中国古典歌謡文学の研究に活用することを目的とする。この研究目的を遂行するために、主に二方面における資料収集をおこなった。ひとつは、日本・中国に所蔵されている中国古典歌謡文学に関連する資料の収集である。もうひとつは、ベトナムに所蔵されている漢籍の調査である。 2014年度は、ベトナムの漢喃研究院図書館に赴き、中国古典歌謡文学に関わる漢籍の調査をおこなった。今回の調査では、特に『楽府探珠』という書物に着目した。『楽府探珠』は、中国古典歌謡文学の一ジャンルである「詞」のアンソロジーであり、ベトナムで編纂されたものである。この『楽府探珠』は、中国の唐代から清代にいたる詞作を収録するほか、ベトナム阮朝の詩人である阮綿審の詞をも収める。そこで、『楽府探珠』に収められた阮綿審の詞と、阮綿審の詞集『鼓枻詞』との比較を端緒として、ベトナム・中国双方の資料を活用することで、『鼓枻詞』の流伝に関する研究をおこなった。その結果、阮綿審は、中国清朝へ赴くベトナムの使者に、自らの『鼓枻詞』を託し、道中で中国の文人に添削を求めさせていたことを明らかにした。以上に述べた内容を整理して論文として発表したものが、「越南漢喃研究院図書館所蔵『楽府探珠』と阮綿審『鼓枻詞』について」である。 また、日本・中国に所蔵されている中国古典歌謡文学に関わる資料の調査をおこない、これらを「『呉騒三集』について」・「名古屋大学文学部図書館蔵『楽府〔りん〕奇』について」の二本の論文にまとめた。 さらに、ベトナム国家大学ハノイ校附属外国語大学から、Nguyen Dai Co Viet(阮大瞿越)講師を招聘し、2014年7月31日に立命館大学衣笠キャンパスにおいて、「ベトナム語と中国語」というテーマで、講演会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、計画通りベトナムの漢喃研究院図書館において、中国古典歌謡文学に関連する漢籍の調査をおこなった。ベトナムにおける現地調査の成果を論文にまとめ、「越南漢喃研究院図書館所蔵『楽府探珠』と阮綿審『鼓枻詞』について」として発表した。 また、日本・中国に所蔵されている中国古典歌謡文学に関わる資料の収集もおこない、これらを活用することで、「『呉騒三集』について」・「名古屋大学文学部図書館蔵『楽府〔りん〕奇』について」の二本の論文を発表した。 さらに、ベトナム国家大学ハノイ校附属外国語大学から、Nguyen Dai Co Viet(阮大瞿越)講師を招聘し、2014年7月31日に立命館大学衣笠キャンパスにおいて、「ベトナム語と中国語」というテーマで、講演会を開催した。 ベトナム・日本・中国などの漢字文化圏内に分散している漢籍を包括的に活用することで、中国古典歌謡文学の研究を進める計画は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、ベトナム国家図書館が所蔵する漢籍の調査をおこなう。ベトナム国家図書館が所蔵する漢籍については、『越南漢喃文献目録提要』(中央研究院中国文哲研究所・2002年)に記載がなく、直接現地に赴いて漢籍カード目録を実見するまで実態は分からない。しかし、その分貴重な文献が、人の目に触れぬまま保存されている可能性も十分ある。 また、日本の東洋文庫が所蔵する越南漢籍の調査もおこなう。『東洋文庫蔵越南本書目』(東洋文庫・1999年)によれば、東洋文庫の越南漢籍は、たいへん豊富なコレクションを構成しており、ベトナムでの現地調査で得た資料と合わせて利用することで、研究の進展が見込まれる。 さらに、ベトナムから研究者を招聘し、講演をおこなってもらうなどの国際研究者交流を通じて、ベトナムの漢字文化に対する理解度を深めたい。
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Research Products
(4 results)