2015 Fiscal Year Research-status Report
18世紀後期英国における国際関係思想の形成と転回 ─国家・帝国・コモンウェルス
Project/Area Number |
26870716
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
苅谷 千尋 立命館大学, 公務研究科, 助教 (30568994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀後期ブリテンの「帝国」と「コモンウェルス」に関わる諸言説の競合的概念とその変容を効率的に解明するために、バークをひとつの軸に置き、彼への応答を追跡するものである。この分析を通して、「国家」を相対化させると同時に、なぜ国家が他の政治空間に比べて優位に立つことができたのかについて、その一端を思想史的に解明することを視野にいれている。 次年度に当たる本年度は、大まかに次の3つの研究を行った。一つは、昨年度はヴァッテルの『諸国民の法』受容以前に当たる、18世紀前期のブリテンの「帝国」と「コモンウェルス」についての言説を整理したが、今年度は、研究計画に従い、受容後に当たる、アダム・スミスとペインの一次資料(主にアメリカ革命について)を読解した。二つ目に、アーミテイジが『思想のグローバル・ヒストリー』で提起した自然法と諸国民の法の分岐に着眼する国際思想史研究の視角を取り入れ、バークの自然法、諸国民の法論を再検討した。様々な分析視角を検討しているが、自然法と諸国民の法の相違点を、従来の研究に比して一層強調するアーミテイジの視角は、本研究が解明しようとする(国家間関係における)「国家」概念の浮上の理由とその意味を、説得的に説明可能であるように思われる。3つ目は、交付申請時においては必ずしも明示できていなかった、バークのインド論の再検討である。この再検討は、上述のアダム・スミスの一次資料の読解の中で、バークとスミスの東インド会社論批判の相違点が、先行研究で必ずしも十分に論じられていなかった点を含み、なおかつ、本研究が扱う「帝国」の特性の解明に大きく資すると判断したため、特に注意して研究をおこなった。 H27年度は、こうした研究成果の一部を、研究会、学会誌への投稿、書評という形で公表した。今年度の課題は、上述の個々の研究成果を、より包括的に研究成果をとりまとめることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が計画にそっておおむね順調に進展していると考える理由は、1) 研究対象としている思想家のうちダヴナント、ボリングブルックはH26年度、アダム・スミスとペインについてはH27年度に、本研究に必要な主要な一次文献の読解及び検討が順調に進んでいること、2) 分析視角の検討が順調に進み、研究対象への適用可能性を検討する段階に進んでいること、以上の2点である。 他方で、H27年度におこなった研究会などでの応答から、申請書の段階では検討対象には入っていなかったJames Mackintoshなどヴァッテル『諸国民の法』受容後の言説について一層、分析する必要があると認識するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の「今後の研究の推進方策」上の大きな目標は、研究成果の口頭発表及び論文投稿を積極的に行い、他の研究者からフィードバックを得ることとする。
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Causes of Carryover |
H26年度、立命館大学に着任したことにより個人研究費を得たため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究資料の整備並びに外部研究会への参加のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)