2014 Fiscal Year Research-status Report
公害地域再生運動における地域共同性及び環境正義の回復過程に関する比較実証研究
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26870718
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
清水 万由子 龍谷大学, その他部局等, 准教授 (60558154)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公害訴訟 / 社会運動 / 経験の継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、(1)公害問題の解決過程に関する既往研究研究のレビュー、(2)各地域の公害事件および反公害運動に関する文献調査、(3)公害地域再生運動組織へのインタビュー調査および文献調査を行った。 (1)に関して、環境社会学においては主に社会運動論や環境と人間の関わりにもとづく合意形成論(生活環境主義、コモンズ論)などに事例研究の蓄積がある。環境正義の回復と地域共同性の回復が同時に課題となっている公害地域において、これらの異なるアプローチはいずれも有用であり、公害地域再生を事例とした解決論は未だ萌芽的な論考があるのみだが、合意形成論および社会運動論を統合することで、公害地域再生論が構築されうるという着想を得るに至った。 (3)では主に新潟(新潟水俣病)、水俣(水俣病)、富山(イタイイタイ病)におけるインタビュー調査を行った。公害地域再生運動組織の活動内容の規定要因には、加害-被害関係の認定と被害救済に関する「決着」のつけ方の他にも、市民参加や協働などの概念の深化と普及といった社会的背景もあることがわかった。新潟、水俣については、訴訟係争中であることからも推察されるように、未認定患者問題や被害者の社会的疎外などの派生的被害が持続していることが公害地域再生の大きな課題であることがわかった。一方で新潟は公害地域再生運動の核となる推進主体が明確であり、運動の成果が見えつつある。富山では強力な被害者組織が裁判闘争と環境再生の推進力となってきたが、それらの経験と記憶をいかに継承するかが課題となっており、改めて公害地域再生の主体が問われる状況となっている。 (2)については、年表および加害-被害構造をあらわす主体間関係チャート図の作成途上であり、今後は(3)における主体間関係チャート図の作成と並行して行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は初年度であったため、研究目的のうち主に(1)加害ー被害構造の把握、(2)公害地域再生運動の成果及び課題の把握について、各地域の状況について情報収集を進めた。論点の整理および主体間関係チャート図等の作成はまだ十分進んでいないため、進捗は少し遅れていると認識している。その理由は、「公害資料館ネットワーク」に参加し、「第2回公害資料館連携フォーラムin富山」の企画運営に携わる過程で、同時に複数の地域と事例を調査する機会に恵まれ、調査実施を優先したことによって、収集した情報の整理が遅れがちになったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に(1)加害ー被害構造の把握、(2)公害地域再生運動の成果及び課題の把握について整理を行い、地域共同性と環境正義の回復過程の解明および両者の相互関係解明に向けた基礎情報の収集と整理を行う。 今後は、すでに一定の研究蓄積のある西淀川について調査分析を深め、新潟、水俣、富山については西淀川と比較しながら情報収集および分析を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度に行ったインタビュー調査のうち、新潟、富山の調査旅費および富山のインタビュー記録テープ起こしについては、「公害資料館ネットワーク」による調査および記録作成を兼ねたため、本研究費の使用を必要としなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、収集した資料・データの整理を集中的に行い、人件費・謝金の使用を進める予定である。また、公害地域再生運動組織へのインタビュー調査について、独自の資料収集やインタビュー調査を行い、旅費の使用を進める予定である。
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