2017 Fiscal Year Research-status Report
公害地域再生運動における地域共同性及び環境正義の回復過程に関する比較実証研究
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26870718
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
清水 万由子 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (60558154)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生活実践 / 加害・被害構造 / 公害経験継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、(1)公害経験の継承に関する実践的倫理の言語化と研究成果公表、(2)公害経験継承をめぐる諸活動の関係者への追加インタビュー調査を中心に行った。 (1)に関しては、前年度の研究実績より公害地域における環境正義の回復と地域共同性再構築の鍵を公害経験の継承であると考え、公害経験を継承する際の困難と可能性について、研究内容を踏まえて清水万由子(2017)「公害経験の継承における課題と可能性」(『大原社会問題研究所雑誌』2017年11月号)にまとめ、公表した。そこでは、これまでの調査研究内容を踏まえ、公害経験を「伝える」側とされる被害者の定義には絶えず揺らぎがあること、公害の加害経験を「伝える」取組みが非常に少ないこと、そして公害経験を「学ぶ」側にも葛藤や阻害要因があることを示した。そのうえで、生活実践の継承と展示解説による継承の2つの可能性を提示した。とりわけ生活実践の継承とは公害地域再生そのものであり、今後は最終的な研究成果のとりまとめに向けて、この点についての掘り下げが必要となる。 (2)については、公害地域再生運動における公害経験継承が持つ意味を検討するため、とりわけ加害側の立場にあった企業関係者へのインタビュー調査を行った。大阪・西淀川と富山における反公害運動および公害訴訟の被告企業関係者へのインタビュー調査である。都市型複合大気汚染における非特異的疾患の加害・被害構造と、単一原因による特異的疾患の加害・被害構造との違いがあるために、単純に比較することはできないが、加害側の公害経験継承の難しさが浮き彫りになり、他地域でもこの点についてさらに比較研究する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的はおおむね達成しつつある。研究期間を1年延長し、新しい視点を追加したうえで、最終的な成果のとりまとめを行い、公表することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的に、公害経験の継承という今日的課題への対応を追加する必要が出てきたため、研究期間を1年延長し、公害資料館ネットワークにおける連携関係の中で調査研究を進め、また研究成果を実践的に還元する機会を持つことが本研究における研究目的をより高いレベルで達成することにつながると考えた。 したがって、今後は各地での公害経験継承の様々な取組みの中から、生活実践における継承と、展示解説による継承の両面から、公害経験の捉え直しと地域再生運動の方向性の状況を明らかにし、比較して最終的な研究成果のとりまとめにつなげる。 平成30年度は追加的な調査と研究成果とりまとめに注力する。
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Causes of Carryover |
前年度からの繰り越しがあったことと、外国旅費を使用しなかった。韓国、中国などアジア地域での研究発表を計画したが、適当な発表機会を得られなかったことが理由である。
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Research Products
(1 results)