2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870726
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
小倉 宗 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (40602107)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幕府 / 法令 / 裁判 / 江戸 / 上方 / 藩 / 奉行 / 代官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸幕府の法令がどのように実現されたのかを実証的に解明するとともに、法令の側面から幕府支配の特質や幕藩体制の構造を把握しようとするものである。その特色は、法令の内容だけでなく、発給する主体や適用される対象、制定・伝達される過程や実施される状況といった法令の実現過程に考察を加える点にある。今年度の成果は以下の通りである。 (1)2014年9月に名古屋大学で開催された法制史学会中部部会の第73回例会において「法からみた幕藩体制」と題する報告を行い、法令およびそれと密接な関係にある裁判の側面から、幕府と藩の関係やその時期的変化について考察した。 (2)研究の成果を「近世の法」と題する論文にまとめ、『岩波講座日本歴史 第12巻近世3』(岩波書店、2014年11月)に公表した。ここでは、日本近世(江戸時代)の法について、幕府や藩による法令と裁判をテーマとし、享保期(1716~36)の前後にわたり、運用の実態にも注目しつつ検討した。また、この論文は、幕府法令が実現されるあり方を全体的かつ通時的に明らかにしたもので、本研究の中核となる成果である。 (3)幕領支配の第一線で活躍し、法令の伝達・実施を担った幕府の代官全員につき、それぞれの経歴や活動内容などを解説する『徳川幕府全代官人名辞典』(東京堂出版、2015年3月)において、今井兼久・五味豊旨・平野正貞・万年頼治など52項目を執筆した。 (4)研究の成果を社会に還元・発信する活動として、2014年11月に羽曳野市立生活文化情報センターで「史料から読む江戸時代の政治と社会―羽曳野を中心に―」と題する講演、翌12月に京都市生涯学習総合センターで「御触書からみる江戸時代の京都」と題する講演を行った。そこでは、幕府や藩から出された法令を読み解きながら、江戸時代の政治・社会の姿を紹介するとともに、現代との歴史的なつながりについて解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画・方法としては、次の3つを柱としている。(1)幕府とならんで譜代・親藩・外様にわたる諸藩を、幕府のなかでも江戸の老中や三奉行のみならず上方など遠国の役人を対象に含め、刊行史料と原史料を幅広く調査・分析することにより、幕府法令の全体的なあり方とその歴史的展開を具体的に明らかにする。(2)調査・収集した史料のうち未刊行で重要なものについては、学術上の共有財産となるよう翻刻・紹介を進める。(3)研究の成果を、日本史学(日本近世史)と法制史学(日本法制史)の二つの分野における学会・研究会で報告するとともに、学術論文として発表し、それぞれの学問分野の進展に貢献するよう努める。 このうち(1)と(3)については、本研究に関連する著書や論文を集中的に読み込み、先行研究の成果と課題、史料の所在状況などを把握すること、幕府や藩に関する各種の刊行史料を収集・分析し、それらをカード化してファイルに整理すること、の2点に力を注いだ。そのうえで、研究代表者がこれまでに調査・収集してきた原史料をあわせつつ、江戸や上方(京都・大坂)の幕府役人、御三家の尾張藩や外様の加賀・長州藩などを主な事例として、幕府法令の実現過程を具体的に解明する作業を進め、学会報告および論文の形で発表した。他方、(2)については、史料の解読に関する専門的能力をもつ研究者の補助を得て、京都や大坂における幕府役人の記録類を翻刻するための基礎作業に着手した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の状況をふまえ、次年度は以下の点を中心に研究を進める。 (1)未刊行の重要史料を翻刻・紹介することは本研究の目的の一つであるが、これには多大な時間と労力を要するため、研究代表者と研究補助者による翻刻の作業をいっそう加速する。 (2)今年度は十分になしえなかったため、日本各地の所蔵機関を訪問して新たな原史料を調査・収集するとともに、翻刻すべき重要史料やその関連史料について再調査を行う。具体的には、東京都や長野県などの所蔵機関において幕府と藩に関する法令集や記録類を調査・閲覧し、デジタルデータやマイクロフィルムの写真コピーの形で収集する。 (3)収集・整理した原史料と刊行史料を分析しつつ、今年度に引きつづき、幕府法令の実現過程について検討を進める。また、それらの成果を学会報告や論文などの形で発表する。
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Causes of Carryover |
研究期間の1年目にあたる今年度は、本研究の全体に関わる基礎作業として、著書や論文の読み込みと刊行史料の収集・整理、および研究代表者がこれまでに調査・収集した原史料の翻刻や分析の作業に重点をおいた。そして、これらの成果をもとに、学会で報告したり、論文や辞書項目を執筆することなどに集中したため、日本各地の所蔵機関を訪問して新たな原史料を調査・収集することが十分にできなかった。また、プリンターやコピー機、文献・資料など、研究代表者個人および勤務先の所有する機材や備品、図書を最大限利用したため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策にもとづき、次年度使用額をも活用しつつ、次年度の研究費は、史料を調査するための旅費、史料の翻刻に関する人件費、著書・論文や刊行史料の収集・整理および原史料の撮影・複写に関する図書購入費・複写費・OA関連費・文具費などに充当する予定である。
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Research Products
(3 results)