2015 Fiscal Year Research-status Report
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26870726
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小倉 宗 関西大学, 文学部, 准教授 (40602107)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幕府 / 法令 / 裁判 / 江戸 / 上方 / 藩 / 奉行 / 代官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸幕府の法令がどのように実現されたのかを実証的に解明するとともに、法令の側面から幕府支配の特質や幕藩体制の構造を把握しようとするものである。その特色は、法令の内容だけでなく、発給する主体や適用される対象、制定・伝達される過程や実施される状況といった法令の実現過程に考察を加える点にある。今年度の成果は以下の通りである。 (1)2015年12月に関西大学で開催された関西大学史学・地理学会2015年度大会において「江戸幕府の上方支配機構」と題する報告を行った。そこでは、法令や裁判が実現される過程に注目しつつ、江戸幕府による上方(八カ国)の支配とその機構について総合的に考察するとともに、幕府の機構に共通する構造や特質、日本近世(江戸時代)における上方の位置などを論じた。 (2)2016年3月に刊行された法制史学会の学術雑誌『法制史研究』第65号において、「書評 坂本忠久著『近世江戸の都市法とその構造』」と題する書評を執筆した。そこでは、幕府の江戸町奉行所から出された法令を主な素材として、近世中後期の江戸における都市法の構造と特質を明らかにし、近世の法や政策のあり方、権力と社会の関係などについて新たな知見を導き出した本書について、その概要を紹介するとともに、研究上の意義を指摘し、今後の展望を述べた。 (3)研究の成果を社会に還元・発信する活動として、2015年10月に大阪大谷大学で開催された大阪大谷大学文学部歴史文化学科の公開講座「シンポジウム 蓮如と大坂―本願寺から始まった近世の大坂―」において「江戸時代の大坂」と題する報告を行った。そこでは、幕府の大坂町奉行所から出された法令(大坂町触)を読み解きながら、江戸時代の都市大坂における政治や社会のあり方を探るとともに、現代との歴史的なつながりを解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画・方法としては、次の3つを柱にしている。(1)幕府とならんで譜代・親藩・外様にわたる諸藩を、また、幕府のなかでも江戸のみならず上方など遠国の役人を対象に含め、刊行史料と原史料を幅広く調査・分析することにより、幕府法令の全体的なあり方とその歴史的展開を具体的に明らかにする。(2)調査・収集した原史料のうち未刊行で重要なものについては、学術上の共有財産となるよう翻刻・紹介を進める。(3)研究の成果を、日本史学(日本近世史)と法制史学(日本法制史)の2つの分野における学会・研究会で報告するとともに、学術論文として発表し、それぞれの学問分野の進展に貢献するよう努める。 このうち(1)と(3)については、昨年度に引きつづき、本研究に関連する著書や論文を集中的に読み込み、先行研究の成果と課題を把握すること、幕府や藩に関する各種の刊行史料を収集・分析し、それらをカード化してファイルに整理すること、の2点に力を注いだ。そのうえで、研究代表者がこれまでに調査・収集してきた原史料とあわせつつ、老中や(寺社・江戸町・勘定の)三奉行・(三奉行の合議体である)評定所、京都所司代や大坂城代、京都・大坂町奉行といった江戸と上方の幕府役人を主な対象として、幕府法令の実現過程を具体的に解明する作業を進め、学会報告の形で発表した。また、本研究に深く関わる成果として、近世中後期の江戸町奉行所における法令の構造と特質を論じた坂本忠久氏の新著をとりあげ、その書評を学術雑誌に執筆・発表した。 (2)については、江戸幕府の史料を解読する専門的な能力と経験を有する研究者の補助を得て、京都や大坂における幕府の役人・役所に関する文書・記録類を翻刻・校訂する作業を本格的に進めた。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の状況をふまえ、本研究の最終年度となる次年度は、以下の点を中心に研究を進める。 (1)未刊行の重要史料を翻刻・紹介することは本研究の目的の一つであるが、これには多大な時間と労力を要するため、研究代表者と研究補助者による翻刻や校訂の作業をいっそう重点的に行う。 (2)今年度は十分になしえなかったため、日本各地の所蔵機関を訪問して新たな原史料を調査・収集するとともに、翻刻すべき重要史料やその関連史料について再調査を実施する。具体的には、東京都や長野県、京都府、兵庫県などの所蔵機関において幕府と藩に関する法令集や記録類を調査・閲覧し、デジタルデータやマイクロフィルムの写真コピーの形で収集する。 (3)収集・整理した原史料と刊行史料を分析しつつ、今年度に引きつづき、幕府法令の実現過程について検討を進める。また、それらの成果を学会・研究会の報告や論文などの形で発表する。なお、研究成果の公表を促進するため、研究代表者が居住・勤務する関西地方(大阪や京都)のみならず、東京などの学会・研究会においても報告を行う。 (4)自治体や大学・高等学校における公開講座・シンポジウムなどの機会をとらえ、一般の方々にも興味深く、わかりやすい形で発信することにより、本研究の成果を社会や国民に積極的に還元する。
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Causes of Carryover |
研究期間の2年目にあたる今年度は、著書や論文の読み込みと刊行史料の収集・分析・整理、および研究代表者がこれまでに調査・収集した原史料の翻刻・校訂や分析の作業に重点をおいた。そして、これらの成果をもとに、学会で報告したり、書評を執筆することなどに集中したため、日本各地の所蔵機関を訪問して新たな原史料を調査・収集したり、翻刻すべき重要史料やその関連史料について再調査することが十分にできなかった。また、プリンターやコピー機、文献・資料などについて、研究代表者個人および勤務先の所有する機材や備品、図書を最大限利用したため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策にもとづき、次年度使用額をも活用しつつ、本研究の最終年度となる次年度の研究費は、史料の調査や学会・研究会での報告に関する旅費、史料の翻刻・校訂に関する人件費、著書・論文や刊行史料の収集・整理および原史料の撮影・複写に関する図書購入費・複写費・OA関連費・文具費などに充当する予定である。
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Research Products
(2 results)