2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ多孔質SiO2エレクトレットの開発および振動型エナジーハーベスタへの応用
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26870728
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鈴木 昌人 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70467786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロマシン/MEMS / エナジーハーべスティング / 振動発電 / エレクトレット / ナノポーラス |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートル級の空孔径を有するポーラスSiO2を作製し,そのエレクトレット材料としての有用性を評価した。このポーラスSiO2は,陽極エッチング法により表面をポーラス化した単結晶Si基板を熱酸化することにより形成した。結果,熱酸化後にポーラスSiO2層の下部に非ポーラス質のSiO2(以下ベースSiO2と呼称)が形成されることが分かった。 このポーラスSiO2とベースSiO2の積層膜(以下ポーラス/ベースSiO2と呼称)に電荷を注入し,膜内に保持された電荷の時間経過に対する安定性,および耐熱性を評価した。この結果,ポーラス/ベースSiO2製エレクトレットは,非ポーラス質の通常のSiO2と比較して時間経過に対する安定性と熱耐性が向上することが分かった。ただし,その性能はすでに報告例のあるSi3N4とSiO2の積層膜(以下Si3N4/SiO2と呼称)製のエレクトレットには及ばないことも判明した。 ただし,ポーラス/ベースSiO2積層エレクトレットおよび,Si3N4/SiO2積層エレクトレットを用いて我々が考案した方式で振動発電試験を実施した結果,ポーラス/ベースSiO2積層エレクトレットを用いた方が,Si3N4/SiO2エレクトレットを用いた場合より発電量が高くなることが判明した.これは,Si3N4/SiO2エレクトレットを振動発電デバイスに適用すると,内部の電荷が放電してしまうためであると考察される。すなわち,振動発電用のエレクトレットとしては,Si3N4/SiO2エレクトレットより我々が開発したポーラス/ベースSiO2積層エレクトレットの方が良好であるといえる。 今後は様々な環境化におけるポーラスSiO2エレクトレットの電荷保持特性の評価,放電現象のメカニズムの解明,ポーラスSiO2作製条件の最適化,等を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目標であるポーラスSiO2のエレクトレットとしての性能評価,および振動発電デバイスへの応用に関する研究は,研究期間の1年目であるH26年度中に大部分が完了した。 当初の計画ではH26年度中はエレクトレットとしての性能評価のみに焦点を当て,振動発電への応用はH27年度以降に行う予定であった。しかし,H26年度中にポーラスSiO2エレクトレットの振動発電への応用に関する基礎実験,およびこれを用いた小型振動発電デバイスの作製と評価まで完了した。このように良好な結果が得られたのは,各実験が望外にうまくいき,多少の失敗を見越して立案した計画を前倒しにできたことが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように,本研究は研究開始時の予想を超える進捗を見せた。そこで,H27年度は当初の計画を進展させ,エレクトレット材料をSiO2だけではなく,別の材料,例えば有機膜も研究対象とする予定である。ただし,全ての材料に共通してポーラス化によるエレクトレットの性能向上という手法そのものは維持する。 また,H26年度中に実施た研究により,研究開始時には考慮していなかった「エレクトレットの耐衝撃性能」が非常に重要であることが判明した。この「耐衝撃性」とは,「振動発電においてエレクトレットに衝撃が印加された際に,どれだけエレクトレット内部の電荷が消失が抑制されるか」を示すパラメータである。この耐衝撃性能が低い場合,エレクトレットとしての他の性能が高くても,振動発電への応用は困難になる。そこで,H27年度は耐衝撃性能の高いエレクトレットの開発も実施する。 さらに,電荷保持力のエレクトレットは,その電荷により強い静電引力を生じるため,振動発電デバイスの可動部分を引き寄せ,貼りつけてしまうことも判明した。そこで,高い電荷密度は保ちつつ,他の物体との貼り付きを防止することが可能なエレクトレットの開発も実施する。具体的にはエレクトレット表面に微細な凹凸を形成することで貼り付きを抑制する手法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画では,主たる研究内容であるエレクトレットを用いた振動発電を実施するために,H26年度中に大型の振動発生装置を購入する計画であった。しかし,実験の進捗に伴い,研究計画時に選定した振動発生装置は本研究の遂行に役立てられないことが判明した。このため,上記装置の購入を取りやめた。代替装置の購入も検討したが,予算内で目的に適合した装置を購入することが出来ず,やむなく既存装置の改造により対応した。また,研究の進捗につれて,大型の振動装置を用いて実験を行うより,小型の発電デバイスを作製してその性能を評価した方が研究目標の達成が容易であることが判明した。以上の理由により,大型の振動発電装置を購入する計画を変更し,H27年度に小型発電デバイスの作製を支援する装置を購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
エレクトレットを用いた小型振動発電デバイスの作製を支援するため,3次元造形装置(3Dプリンタ)を購入することを計画する。この3次元造形装置は,発電デバイスのケース,カバーばね構造の支持部品を作製するために使用する。 単結晶シリコン基板等の消耗品の購入,成果の発表に関する旅費,論文印刷費等については当初の計画通りに使用する予定である。
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