2015 Fiscal Year Research-status Report
乳癌幹細胞の由来の解明 ― 乳腺幹細胞可視化マウスの生体深部イメージングを通して
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26870729
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
厚海 奈穂 関西医科大学, 医学部, 研究員 (90612151)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳腺幹細胞 / がん幹細胞 / 細胞系譜追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、細胞の標識および追跡が可能な多色細胞系譜追跡法を用いて正常乳腺組織幹細胞を生体内で可視化することである。 そのためには、乳腺幹細胞を特異的に標識するマーカー分子が必要であるが現時点では不明のため、この探索を行っている。前年度は、他の組織で幹細胞マーカーとしての報告がある遺伝子の下流に CreERT2 をノックインしたマウスと、多色細胞系譜追跡のために当研究室で開発されたレポーターマウスであるレインボーマウスとを掛け合わせることで、乳腺幹細胞を標識できるかどうか検討を開始した。今年度は、タモキシフェンによる誘導後、長期間経過後のマウスの解析を行った。 並行して、乳腺幹細胞マーカーとなり得る分子を標識できるような新規マウスの作出も実施している。簡便かつ短期間でのマウスの作製のためにはトランスジェニックマウスを、必要であればノックインマウスの作製を予定している。トランスジェニックマウスに関しては、内在性の遺伝子発現が良く再現されることを期待して、BAC Tg の作出を予定している。大腸菌内相同組み換えのシステムとして前年度に着手したものを改良するために、本年度は異なるシステムの立ち上げを行った。ノックインマウス作製の為に必要な ES 細胞培養および組換え体の取得や一連の発生工学実験の立ち上げの結果、キメラマウスの取得および生殖系列への移行を確認した。 本研究の第二目的かつ最終目標は、同定した乳腺幹細胞ががんの起源であるがん幹細胞になるかどうかを調べることである。前年度に、がん幹細胞のモデルとして使えることを確認した乳がんモデルマウス(トランスジェニックマウス)と、がん幹細胞マーカー候補遺伝子の下流に CreERT2 をノックインしたマウスおよびレインボーマウスとの3系統のマウスを交配して、乳がん発癌過程を通した解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳がん自然発症モデルマウスを用いた多色細胞系譜追跡の結果、乳がん幹細胞マーカーの候補となる遺伝子を見出すことができた。 新規マウス作出系のセットアップに関しては、BAC Tg およびノックインマウスに関して概ね順調である。交付申請時と比較して、 新たに CRISPR/Cas9 によるゲノム編集技術を利用した新規マウス作出が一般的となってきた。そのため、この実験系のセットアップも行い、こちらも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
正常および乳がんにおける多色細胞系譜追跡、様々な方法を用いた新規マウス作出系のセットアップは順調に進行しており、これらを利用して新たなマーカー分子の探索を計画に沿って進めていく予定である。 一方で、マウスの感染事故による動物実験の一時中止のため、解析に必要なマウスの交配から再開する必要があることから大幅な遅れが見込まれている。従って、並行して in vitro での幹細胞評価系が必要とされる。野生型マウスから単離した正常乳腺上皮細胞および、乳がんモデルマウスから単離した乳がん細胞の培養系を用いた in vitro 多色細胞系譜追跡ならびに遺伝子改変を行うことで対応する予定である。
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