2014 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体耐性細菌のゲノム解読と耐性機構の解明、有用酵素の開発
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26870731
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
倉田 淳志 近畿大学, 農学部, 講師 (10416000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イオン液体 / Bacillus属細菌 / イオン液体耐性 / 浸透圧ストレス / ゲノム解析 / 次世代シーケンサー / 耐性酵素 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
親水性イオン液体を溶媒に用いた有用物質の生産技術が注目されているが、親水性イオン液体は酵素を失活させて細菌の生育を阻害する。そのため親水性イオン液体を溶媒に用いた微生物変換系の開発には困難がある。そうした中、イオン液体耐性酵素を生産する親水性イオン液体[BMIM][Cl]耐性・耐塩性Bacillus amyloliquefaciens CMW1を発見した。本研究では本菌株を用いて、細菌と酵素の[BMIM][Cl]耐性機構の解明、耐性酵素の開発を目的とした。 現在まで、グラム陽性細菌のイオン液体耐性機構は不明である。そこで本研究で見いだしたBacillus amyloliquefaciens CMW1のゲノムDNAを解読した。ゲノムDNAライブラリーを構築して、DNA断片の塩基配列を決定した。得られたリードはアセンブルとギャップクローズを行い、ゲノムDNA 3.9 Mbpの塩基配列を決定した。その後、アノテーションを行い、タンパク質をコードする遺伝子候補9175 個を見いだした。 グラム陰性細菌Enterobacter lignolyticus SCF1は親水性イオン液体[EMIM][Cl]耐性を示し、浸透圧耐性に関与する遺伝子が機能すると報告されている。B. amyloliquefaciens CMW1でもこれらの遺伝子が保存されていたことから、グラム陽性細菌においても同様の耐性機構の存在が示唆された。実際に補償溶質を添加して培養した場合、B. amyloliquefaciens CMW1は[BMIM][Cl]耐性を示して良好に生育したが、補償溶質の無添加条件では[BMIM][Cl]存在下では生育しなかった。したがって、B. amyloliquefaciens CMW1の[BMIM][Cl]耐性には、浸透圧耐性に関わるストレス応答が関与していると示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、親水性イオン液体耐性グラム陽性細菌についてゲノム解読を行った。親水性イオン液体へのグラム陰性細菌の耐性機構と比較することで、グラム陽性細菌の親水性イオン液体耐性について明らかにすることができた。実施内容の一部を学術誌(査読あり)に発表することができた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
親水性イオン液体[BMIM][Cl]は、難水溶性バイオマスを溶解できるため有用性が高い。しかし、低濃度で大腸菌や枯草菌の生育を阻害し、酵素を変性および失活させる。そのため、既存の菌株からの[BMIM][Cl]耐性酵素の探索は困難であり、高濃度[BMIM][Cl]耐性酵素は未開発である。初年度に申請者は、親水性イオン液体耐性B. amyloliquefaciens CMW1のゲノムDNAを解読し、多数の酵素遺伝子を見いだした。そこで今後は、本菌株の有用酵素遺伝子を用いて、親水性イオン液体耐性を検討する。具体的には、異種発現系を用いて有用酵素の発現系を構築する。各酵素は、各種クロマトグラフィーを用いて精製して、[BMIM][Cl]耐性酵素を得る。
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