2014 Fiscal Year Research-status Report
難治性アトピー性皮膚炎に対する新規治療方法(FTY720外用療法)の開発
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26870739
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
辻 琢己 摂南大学, 薬学部, 講師 (90454652)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | FTY720 / アトピー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,難治性アトピー性皮膚炎(AD)を効果的に治療する新しい治療戦略の構築に関する基礎的研究を行っている.本申請課題では,FTY720を外用薬として臨床に供給するための基礎的所見を集積し,FTY720の局所作用を明らかとすることを目的としている.平成26年度は,ダニ抗原を用いて皮膚炎を誘導したNC/Ngaマウスを用いて,FTY720の外用療法の有用性およびFTY720の局所作用を組織学的および生化学的に明らかとした. NC/Ngaマウス(8週齢,雌)にダニ抗原を塗布し,皮膚炎を誘導したマウスを,FTY720群(0.001% FTY720軟膏を1日1回,週6回塗布),ベタメタゾン群(ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏を1日1回,週6回塗布),タクロリムス群(タクロリムス水和物軟膏を1日1回,週6回塗布)および軟膏基剤群(軟膏基剤を1日1回,週6回塗布))に分け,治療効果を調べた.その結果,治療前後の皮膚炎の程度(ADスコア)は,軟膏基剤群(6.2 ± 0.8(SD)→3.4 ± 1.3(SD))と比較してFTY720群(6.3 ± 1.0(SD)→1.8 ± 1.9(SD))でのみ有意に低下した.また,表皮の肥厚の程度および炎症部位の浸潤マスト細胞数も,軟膏基剤群と比較してFTY720群でのみ有意な改善および減少がみられた.さらに,皮膚のバリア機能の指標となる経皮水分蒸散量(TEWL)を治療前後で比較した.その結果,FTY720群の治療後のTEWL(61 ± 10(SD) g/m2/h)は,治療前(32 ± 15(SD) g/m2/h)と比較して有意に低下していた.また,組織学的解析から,FTY720群では,皮膚バリア機能に不可欠なタンパク質(クローディン-1およびフィラグリン)を介したバリア機能も改善している可能性も示唆された.以上の結果は,現在,論文投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,本課題申請時の研究計画に記載した通り,おおむね順調に進行している.すなわち,研究実績の概要で記載したように,FTY720軟膏による外用療法が,ベタメタゾン軟膏やタクロリムス軟膏で改善しない皮膚炎を有意に改善し,皮膚バリア機能も改善することが示唆された.組織学的解析(表皮の肥厚の程度,マスト細胞の浸潤の程度,クローディン-1およびフィラグリンの検出)では,パラフィン切片および凍結切片が必要であるが,本申請課題で購入したミクロトーム(パラフィン,凍結両切片の作成が可能)を有効に活用できた結果と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,本課題申請時の研究計画に記載した通り,難治性アトピー性皮膚炎に対するFTY720の外用療法の有用性を明らかとした.また,平成27年度に実施予定の皮膚バリア機能の改善作用に関しても一部実施した.これらの結果をもとに,平成27年度は,FTY720が皮膚バリア機能に与える効果を詳細に検討する予定である.すなわち,クローディン-1だけでなく皮膚バリア機能に重要なタイトジャンクションの構成タンパク質(トリセルリン,オクルディン等)にFTY720が与える効果について,遺伝子レベルおよびタンパク質レベルで解析する予定である. 以上のことを明らかとし,FTY720が皮膚バリア機能の改善(正常化)作用も有していることを明らかとする.
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Research Products
(2 results)