2016 Fiscal Year Research-status Report
周期的床振動時の立位姿勢制御に対する外乱視覚刺激の影響
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26870746
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Research Institution | Osaka Health Science University |
Principal Investigator |
伊禮 まり子 大阪保健医療大学, 大阪保健医療大学 保健医療学部, 講師 (30711311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 姿勢制御 / 視覚 / 外乱 / 事象関連電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
周期的床外乱時の立位姿勢制御課題において、視覚入力は頭部を安定させるために重要な感覚情報となる。しかし、視覚情報が姿勢制御に有効な場合と外乱となる場合とでは、視覚への注意の向け方が異なるものと推察される。本研究は、周期的床外乱時に提示する視覚情報の種類と提示タイミングの違いが、姿勢制御および感覚情報の脳内処理過程に及ぼす影響を検討した。 健常若年成人13名を対象に、周波数0.5Hz、振幅2.5㎝の前後方向への周期的床移動(床振動)外乱を負荷した。はじめに、被験者は閉眼にて1分間の試行を十分に適応するまで繰り返した。次に、視覚情報の提示および遮断を制御できるシャッターゴーグルを用いて、以下の4つの床位置において視覚情報を500ms間提示した:床の前方ないし後方変曲点、後方から前方および前方から後方への中間点。提示する視覚情報は、姿勢制御に有効な垂直線、ないし垂直線が毎秒10度で左右へ回転する画像の2種類とした。視覚提示時点をトリガとして脳電位を加算平均し、視覚提示から約200ms後に生じる陽性電位のピーク(P200)振幅を求めた。さらに、姿勢の安定性の指標として、足圧中心動揺平均速度を算出した。 足圧中心動揺平均速度は、床振動の後方で垂直線を提示した場合に、他の床位置で提示した場合に比べて減少する傾向が認められた。加えて、P200振幅は、後方で視覚を提示した場合に有意に大きかった。床振動の後方変曲点付近では、筋活動に伴う体性感覚情報が少ないため、他の時点に比べて、姿勢制御に有効な視覚情報に注意が向けられるものと推察された。一方、外乱視覚刺激の提示では、提示タイミングによる顕著な影響は認められなかった。視覚情報の使い方には個人差が認められることから、今回の被験者にとっては、用いた視覚刺激が外乱とならない可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験の方法論の検討に時間を要したため、周期的床移動外乱を用いた測定が当初の計画より遅れている。当初は平成27年度に若年者、平成28年度に高齢者の測定を行う予定であったが、平成28年度にも引き続き若年者を対象に測定を実施した。その結果、提示する視覚情報の種類および提示タイミングによる違いが明確に現れた被験者がいる一方で、全体的にみると顕著な差異が認められなかった。視覚情報の使い方には個人差があることから、本実験のように短時間のみ視覚情報を提示するような場合には、より視覚の影響を受けやすい被験者を選定する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27-28年度に実施した測定のデータ分析を完了し、国内・外の学会で発表するとともに、論文化を進める。今年度は高齢者の測定を実施するため、まず実験条件の選定(現在は測定が長時間にわたるため、条件を絞り込む必要がある)をし、被験者の募集を行う。8月までに予備実験を行い、8月以降~12月ごろまでに高齢者を対象とした測定を実施する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画より進行が遅れたため、平成28年度に予定していた高齢者の実験の謝金、および実験実施地である金沢学院大学への旅費に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
被験者謝金として使用する。また、所属施設の設備では実験の実施が困難であることから、共同研究者が所属する金沢学院大学にて実験を行うため、旅費として使用する。
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